日本人以外のビジネスパーソンも取り上げたいということで、前号からリニューアルした『Business Talk』のコーナー。
8月10日発行『ニョニュム』96号では、特集「味わうカフェ空間」の中で、カンボジアを代表するコーヒーチェーンとして紹介した『BROWN COFFEE AND BAKERY(以下、ブラウン)』のCEO・Chang Bunleang(チャン・ブンレアン)さんをインタビューしました。
ブラウンは現在プノンペンに17店舗、シェムリアップに2店舗を構え、カンボジアを代表する巨大コーヒーチェーン。カンボジア人の学生や在住外国人など、幅広い客層から支持されています。
カフェ業界を率い、カンボジアの未来を創る起業家のストーリーです。
従兄弟6人で会社を興す。仕事を探す中で起業を決意
——まずはカフェを開いたきっかけ、そして誰とどのように始めたか教えてください。
海外生活の経験がきっかけです。「BROWN COFFEE AND BAKERY」は2009年、私が23歳のときに従兄弟5人とともに創業したのですが、私たちはその前にオーストラリア、アメリカ、タイなど別々の国へ留学していました。
そして卒業後に帰国し、自分に合う仕事を探しているうち「探すのではなく、自分たちで職を創り出してしまえばよいのでは?」という考えに至りました。そこで、海外各国で自分たちが体験した現代的なライフスタイルをヒントに、「新しいコーヒー文化をカンボジアに紹介しよう」とカフェを開くことに決めたのです。
創業メンバーそれぞれが異なるスキルを持ち寄り、その実現に向けて動き出しました。私は経営のために多くの時間を割き、1人はパンやお菓子作りに集中、その間にほかの者が店舗の設計や建設を進めるといった具合に、お互いの足りない部分を補い合いながら懸命に動き、これが後に実を結びました。
初号店オープン当初3カ月は厳しい経営状況でしたが、それでも信念を持ち続け、お客様の意見に耳を傾けながら商品やサービスの改善に努めました。それが、今日のブラウンにつながっています。
——もともと多店舗展開を考えていたのでしょうか?
はじめは最初に開いた店をよりスムーズかつ健全に運営することに集中していたのですが、そのなかで、カフェが人々の生活の中で果たす役目とそのポテンシャルの大きさに改めて気づかされました。そこで、「もっとたくさんの人たちにブラウンを体験し満足してもらいたい」という思いから、別の場所にも店を出すことを決めました。以降、「より多くの人の身近な場所に」と各地に店舗を増やしています。
「最高のコーヒー体験」を生む空間を創りたい
——ブラウンのコンセプトやモットーを教えてください。
創業以来、ドリンクや食べ物、空間を含め「最高のコーヒー体験を提供する」というコアバリューに基づいて経営しています。単なる「店」を超えた「空間」を創りたいんです。自家製のコーヒー、作りたてのパンやケーキと料理でお客様に喜んでもらいたい。そしてその空間は、みんながくつろいだり、勉強や仕事をして過ごせ、人と人がつながれる、そんな暖かく心地よい場所でありたいと考えています。
さらに、カンボジアの若者に対する機会の創出にも重きを置いています。私たちにとって、スタッフは家族同然。彼らが成長し人生で成功するのを見たい。この思いから、スタッフが大学に通い続けるための奨学金制度を設けました。
会社としては、いつか我が社がカンボジア人1万人の雇用を生むことが夢です。また私個人としては、カンボジアで生まれたローカルブランドを、国内だけでなく海外でも認められるものにしたいと思っています。
——店舗は、誰がどんなコンセプトで設計しているのですか?
店舗設計においては、創業者のうち4人が建築、エンジニア、内装といったスキルを持っていることは我々の有利な点です。一方で、多様かつ独創的な空間を創り出すため、いろいろな建築家と組むようにしています。それぞれの建築家が持つ想像力と独自性のもと、店舗ごとにコンセプトが異なります。
「これまでにないブラウンをデザインしてください」。この1点だけをお願いし、あとは建築家たちに自由に新しいことに挑戦してもらっています。このやり方で出来上がるものに驚かされることを、私たち自身も毎回楽しんでいます。
——ほかにも、ブラウンの強みを挙げるとすると?
ブラウンのビジネス上の強みは、10年近くにわたって多くのお客様と関わり、その声を聞いてきたことだと私は考えています。常にお客様との会話を心がけ、そこから彼らの好み、どんなドリンクや食べ物が求められるかを知りえてきました。
またこれに加えて「新鮮さ」もあります。自社で焙煎を行っているので、品質を管理できるのです。ブラウンでは、焙煎後12時間から14日までの間の豆だけを使用しています。
品質の安定、そしてお客様に「最高のコーヒー文化」を体験してもらうため、私たちは最善を尽くし続けています。
——最後に、起業したいと考えているカンボジアの若者に、何かアドバイスやメッセージを。
起業家になりたいという情熱が本当にあるなら、しっかり計画を立て懸命に取り組み、思い切って始めるべきです。恐れず、待たず、文句を言わず、前向きに動き出しましょう。つまずいたり失敗することもあるでしょうが、その度に立ち上がって、迅速に動き、懸命に働き、賢くなればいい。
またどんなビジネスにおいても、「コミュニティをよりよい場所にする」ことがコアバリューのひとつ、つまり核となる価値観のひとつであるべきだと私は思います。
(2018年8月10日発行『NyoNyum』96号/9月10日発行『NyoNyum Khmer』29号より)
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