忙しさにかまけて家事というものをほとんどしてこなかった私は、このままじゃいけないんじゃないかと、最近お料理の勉強を始めた。私の独り身ウン十年の歴史のなかで、お料理というものが生活の一部であった時代もあったにはあった。だからきっとできるだろう。そう思って、恐らく15 年くらい前に買いそろえていた料理本を手に取った。
でもなかなか時間が取れず再び日本出張…という数カ月が続く。そして、ようやく日本出張を終えてしばらくカンボジアに居られる、料理の勉強ができる! と思って戻ってくると、なんだか世の中ではとんでもないことが起きていた。
なんと、プノンペンでは「日本食店オープンラッシュ」が…。なに、何?いったいなんなの? 浦島太郎状態とはこのことだ。急いでこの波に乗らなければと、お料理修行もそっちのけ。連日、昼・夜と外食を重ね、新しいお店に顔を出す。おしゃれな内装、工夫をこらしたおいしいお料理。心とお腹が満たされていく反面、私はある脅威を感じた。このままじゃ、お料理ができる必要がなくなってしまうじゃないか。
だって、無理して自宅で料理しなくたって、会社帰りにどこかのお店に立ち寄って帰ればいいし、今のところ独りなのだから有り余る食材を買って少しの料理を作ったって、費用的にも外食をしたほうが得なような気がするし…。
しかし「いくら外食がおいしいといっても、やっぱり男性の心は胃袋でつかまなくちゃね」なんて励ましの声(?)も。ふむ。それも一理ある。さて、どうなんでしょう。ここでお料理修行をやめて、増え続ける飲食店にみすみす胃袋をつかまれるか、この逆境に負けず誰だかわからない人の胃袋をつかむために頑張るのか…。
今のところの結論は…。とりあえず、病気で寝込んだ時にちょっとしたものを作れるくらいはできたほうがいいのでは。自分の胃袋は自分でつかめ! これ大事だわ。うん。
2013.8-9月号(第66号)掲載
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