ヘン・シータイさん(28)は、宇都宮大学の博士後期課程3年生で、地域創生学研究科のグローバル地域デザインを研究している。プノンペン王立大学の外国語学部(IFL)で日本語学科を専攻し、2018年に日本へ留学する前は大学で日本の社会と文化を学び、その頃から日本語が流暢だった。2022年に在日カンボジア留学生協会の会長を勤めた経験もあり、日本の大学での勉学や学外活動で学んだことなどについてニョニュムのインタビューに応じていろいろ話をしてくれた。
日本留学のきっかけは?
私は外国語学部(IFL)で日本語学科の日本文学を専攻し、在学中の3年生の時、つまり、2016年に宇都宮大学の1年間の交換留学生として初めて日本に来ました。当時、交換留学で日本に留学できたのは、大学にあった優秀学生向けの奨学金制度のお陰でした。学内の成績が優秀という条件を満たしたため、2016年から2017年までの1年間の奨学金で初めての日本留学ができたのです。帰国後は残り1年の大学生活を送りながら、カンボジア人学生向けの日本での修士号取得のための別の奨学金に応募しました。応募と面接の要件を通過した結果、4年生の終わりに、その修士課程の奨学金プログラムで再び日本に留学することが決まりました。
日本で修士と博士課程での勉強と研究について教えてください。
修士課程は宇都宮大学で国際関係のソーシャルデザインという専攻を選びました。この専門分野は、日本に住む移民の公共福祉に焦点を当てた社会開発研究です。たとえば、私たちは移民を研究し、彼らが海外に住むなかでどのような問題に直面するか、また、その地域が外国人の居住が可能かどうか、どのような公共サービス(病院、学校、警察署など)があるかを調べたりします。トラブルが生じた際に移民を支援するための多言語グループの設立など、移民の福利厚生を考え、整備する必要があります。つまり、この社会開発研究は、日本に住む外国人の福祉や教育、安全、精神面のリスクなどへのサポートを提供します。博士号も移民の保護と福祉にさらに重点を置き、社会開発の分野で詳細な研究を続けています。
日本での生活は?
日本語ができることは、学校での勉強はもちろん、日本人の友達や周りの人とのコミュニケーションをとるのにとても役立ちます。そのためか、大学では日本の学生たちと競争する勇気ももらいました。日本語ができることは、日本人とのコミュニケーションが深くなり、日本人の文化や性格を理解するのに大いに役立ちます。
学外活動は?
修士号も博士号も、研究をするのに十分な奨学金が提供されるので、生活費には困りません。そのため、学校での研究以外は、ボランティア活動やアルバイトをしています。例えば、私が住む地区の役所や警察署、病院で通訳のボランティアやアルバイトをしています。ボランティア活動もアルバイトも、私の望みはお金を稼ぐことではなく、例えば、病院で治療を受けに来たカンボジア人が日本での十分な治療サービスを受けるのに役立つことができます。私にとっても、働きながら日本の病院での治療サービスの実態や治療に関する専門の言葉を学んだりできます。さらに、市役所からチラシなどの多言語の翻訳をして、困っている人たちに役に立つ活動を積極的に参加したいと思っています。
日本での生活は?
最初は、日本人が仕事ばかりしているため、ロボットのようだなと感じました。この過重労働文化は、ほとんどの時間を仕事ばかりに費やすため、日本人は人生の楽しみが少なくなっているようでした。また、日本人は何かをする時は、明確な計画を持ち、特に将来の人生計画を持っていることがわかりました。しかし、この国に長く住んでいると、次第にこういう仕事に対する私の意識も変化しました。すなわち、日本人は幸福ではないのではなく、この国の国民の幸福とは、仕事をたくさん一生懸命することなんではないか、という思いに至りました。
将来、望むキャリアとは?
この博士号を取得した後は、数年は日本で移民と関わる仕事に就きたいです。移民労働者の福利厚生の実態を仕事からさらに学び、かつ経験を積み続けたいと考えています。将来は、国で市役所の職員か、自分の研究の専門分野を生かせる政府の省庁に就職し、国の各都市の福利厚生の制度づくりに貢献したいです。隣国に負けず組織的で体系的な都市を作り上げている日本のように、自国の発展に身を捧げたいです。
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