南部経済回廊といわれるカンボジアをべトナム・ホーチミン市とつなぐ国道1 号線の途中にあるメコン河に、ついに橋がかかった。その名も「つばさ橋」。日本の無償援助で建設されたメコン横断橋。カンボジアの歴史的建造物ともなりうる、美しいデザイン。建設が始まってから開通まで、私も何度もバベット(ベトナム国境の地域)へ出張する機会があり、フェリーに乗りながら少しずつ工事が進んでいく様子を「興味深く」見てきた。
これまでに、私がプノンペン大学を卒業した2000 年頃に「きずな橋」、そしてカンボジアに初めて赴任した1994 年に「日本カンボジア友好橋(通称:日本橋)」が日本の援助で建設されている。これらの橋は私にとっては「思い出の橋」でもある。2015 年のこの「つばさ橋」開通も、いつか「私がなになにをした年」って思い出と結びつく出来事になるのかな。
そんな個人的な興味と一緒に、もう1つ密かに興味を持っているのが、「おもしろ裏話」についてだ。きずな橋がお札の絵柄になったとか、日本橋が「プロジェクトX」で取り上げられたとか、そういうメジャーな話ではなく、もっとマイナーな裏話。それを実は以前ニョニュム第5 号(2004 年2 月号(当時は月刊誌でした))のエッセイで書いている。以下その抜粋を交えてご紹介したい。
きずな橋の開通後は「KIZUNA 橋ブルース(仮)」みたいな歌ができて、ド演歌調の音楽に合わせて「♪~キズナ~、キズナ~」と女性が橋の上で男性を思い焦がれるカラオケビデオが流行ったようで、ある意味これも経済効果よねぇ…なんて感心したことがあった。
そして日本橋にはこんな喜劇?、いや悲劇ソングまで発生。「♪~僕はしがない船頭さ。川を行ったり来たりするだけの日々。儲けは少ないけど、そんな僕にも楽しみがあるのさ。それは毎〈ボンユキ・プロフィール〉在カンボジア歴、足掛け20年。翻訳、通訳のほかカンボジア関連のアレンジコーディネートを手がけることも。仕事に追われつつも、大好きなビールは絶対に欠かさない。日僕の舟に乗るかわいい娘。彼女の黒い髪が風になびき、僕は彼女に釘付けなんだ…。ところがチュロイチョンヴァー橋(日本橋のカンボジア語の名称)が完成してしまったおかげで、彼女と会えなくなってしまったんだ…」(注:歌詞のフレーズはかなり脚色していますが、そういう内容の歌だったようです)。しかもこの歌、なんとノンフィクションというではありませんか! 橋の落成から数年後に、当時の若者たちの間で大ヒット。プノンペン大学の学生だった私は、「日本が橋を造っちゃったせいで、かわいそうな船頭の恋が実らなかったんだ。しかも失業までしちゃったよ」とからかわれた。たしかに、そりゃかわいそうだわ。
さてさて2015 年開通の「つばさ橋」。どんな裏ドラマが起こるのか、カラオケビデオのチェックが欠かせません!
2015.4-5月号(第76号)掲載
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