パウさんは30年以上オンドン・ルッセイ村で焼き物を作り、変化を体験してきました。
1998年ドイツの支援が入り、村にろくろ成形と野焼きに代わって窯での焼成技術をもたらしました。パウさんはその1期生です。商品のバリエーションが増え、より高く売れるようになりましたが、パウさんの夢はもっと先にありました。「釉薬陶器も自分たちで作りたいと思いました。でもドイツの支援で学んだ釉薬は海外産で自分たちでは作れません。また高温で焼ける窯も村にはありませんでした」
2005年から栃木県が自治体国際化協会を通じ益子焼の陶芸家を派遣して支援、2007年には村に高温焼成窯が出来ました。しかし2008年に終了してしまいます。技術研修で行った益子で見たもの、学んだことがパウさんの心にずっと残っていました。
そして、私たちのプロジェクトが2009年に始まりました。地元で採れる土を陶土に、地元で採れる自然原料で釉薬を作り、薪窯で高温焼成する陶器の生産が軌道に乗りました。この15年で伝統的な製法からろくろと窯を使用した素焼き、さらに釉薬陶器生産へと。収入もそれにつれて上がってきました。
「不安もあったけど続けることが出来たのは焼き物作りが大好きだったから。ずっと頑張ってきたので、思い描いていた釉薬陶器作りが出来るようになって嬉しい。もっと売れるようにもっときれいなものを作りたい」とパウさん。チャレンジはこれからも続きます。
明 博史(Hiroshi AKE)
カンボジア伝統陶器プロジェクト プロジェクト・コーディネーター。日本でテレビニュース・ドキュメンタリー番組制作、写真、ウェブサイト制作などメディアの仕事に関わる。2000 年、初めてカンボジアに。2009 年、地雷・不発弾対策支援NGO のカンボジア事務局代表としてバッタンバンに赴任。コミュニティー開発支援にも携わる。任期終了後、「カンボジア伝統陶器プロジェクト」に参加。地場産業として盛り上げるべく、生産管理、マーケティング、プロモーションなど担当。現在、カンボジア生活5 年目。
2013.6-7月号(第65号)掲載
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