私の通訳者としてのキャリアは2000 年のプノンペン大学卒業と同時に始まった。今年で通訳歴まる15 年となる。
ほんとのほんとの一番最初の通訳の仕事は1998 年にいただいたもので、ある団体のカンボジア視察にタイからコーディネーターの方が同行されていた。日本大使館の当時の領事がコーディネーターの方に私のことを紹介してくださってのご縁だったが、正直言って今から思うと、通訳なんてとんでもない、ほんとにまだまだひよっこの通訳の仕事だった。
地方の学校施設などを回ってヒアリングをするのだが、やはりわからない単語もいっぱい出てくる。その度に詰まってしまい、モタモタしていると、そのコーディネーターの方が英語で通訳し、英語がわかる現地の担当の方がフォローしてくださった。本当に恥ずかしかったし、こんなんだったら仕事を請けるんじゃなかった…と思ったりもした。それでもすべての行程をお客様とご一緒し、仕事が終了した。
最後にコーディネーターの方が私に言った。「山崎さん、今回通訳としては100 点をあげられないレベルだったけど、あなたはきっといい通訳になるわよ」
びっくりしていると、彼女はこう言った。「その理由は、わからない時にわかったふりをして適当に流さなかったでしょ。わからない時にきちんとわからないと言えるその正直さが、通訳として成長できる要素なのよ。その姿勢さえ崩さなければ、あなたはきっといい通訳になるわよ」
後日、その方がタイではとっても有名な日本人のタイ語通訳者で、タイのこの業界では知らない人はいない方だということがわかり、さらにその言葉の重みが増したのだった。
この言葉を胸に15 年間、通訳として仕事を貫いてきた。そしてこれからも貫いていこうと思う。もっともっといい通訳になるために。
2015.2-3月号(第75号)掲載
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