NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、カンボジア人が重宝するある食材のおすそ分けについて。
粋なお福分け
手作り料理やいただき物などを隣人や友人に贈る「お福分け(おすそ分け)」。
カンボジアの村人からもよくいただきます。
たいていはその家の庭で実ったバナナやパパイヤ、それに野生の芋など果物や野菜がほとんどですが、先日いただいたのは、人の顔くらいの大きさの土の塊。
それはなんと、白蟻の巣の一部でした。しかも、その中にいる女王蟻をどうぞお食べください、とのこと!!
カンボジアの農村部では木の根元や田んぼの中などに、大きな土の塊、いわゆる蟻塚ができているのをよく見かけますが、これが白蟻の巣です。中は迷路のようなトンネルが張り巡らされていて、無数の働き蟻(職蟻)の他、ニンフ(雨期の初めに飛び回る、カンボジアで“メイプリエン”と呼ばれている羽蟻の前段階)や兵蟻、一対の王蟻・女王蟻が住んでいます。
ちなみに、蟻は蜂の仲間であるのに対して、白蟻はゴキブリなどに近い昆虫の仲間で生態が異なります。
特に女王蟻の姿は芋虫に近く、“女王”のイメージとはかけ離れた容姿ではあるのですが、栄養豊富で、滋養強壮や身体を冷やす効果があるとして村人の間では重宝されています。
一つの蟻塚にたった一匹しかいない女王蟻。
しかも細かい土と蟻の唾液とでできている蟻塚はとても固く、つるはしで叩き割らなければ壊せませんが、その日は、いくつかの蟻塚を除去する作業を行っていたとのこと。
村の人は、あの大きな土の塊のどこに女王蟻がいるかという生態も把握しているのですね!
女王蟻を見つめる嬉しそうな眼差しからも、彼らにとっていかに貴重なものかということがわかります。
そんな大切な女王蟻を巣ごと丸ごとお福分けしてくれた村人は、私が大喜びする姿を思い描いていたのでしょうか。ありがたいことです。
残念ながら、このときの女王蟻はすでに巣の中で絶命していて味わうことはできませんでしたが(内心、ホッとしました)、村人の心意気を嬉しくいただいたのでした。
(この記事は2018年12月に発行されたNyoNuym98号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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37:次は文化祭!
38:4人目の勤続10年スタッフ
39:#cafemoimoi で繋がる輪
40:ノンちゃんはトリリンガル
41:粋なお福分け
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