(日本語) アンコール見聞録 #1 アンコールトーイに行ったことありますか?
(日本語) アンコール見聞録 #1 アンコールトーイに行ったことありますか?
2020.02.01

NyoNyum Magazine にて連載しているコラム「アンコール見聞録」

上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者として、シェムリアップでアンコール建築に関する研究を行っている三輪悟さんが、アンコール建築の歴史や、遺跡の周りで営まれる生活、カンボジアにまつわるあれこれを綴ります。

はじめての今回は、アンコールトーイというあまり知られていない遺跡について。

アンコールトーイに行ったことありますか?

大学院生だった1990年代後半に、カンボジアを6回訪れ、都合260日間ほど滞在した。

上智大学調査団の一員として、アンコールワット西参道の実測調査に参加する一方、空いた時間を見つけては、探検家気分で草木を分け入り、連日体力の限り周辺の遺跡を巡った。

滞在日数が100日を超え、相応に遺跡の知識を身につけて自信を持ち始めたころ、たまたま入った食事処のウェイトレスの言葉「貴方はアンコールトーイ遺跡に行ったことはありますか ?」に耳を疑った。

私は「え ? それはどこですか ? 私のガイドブックには載っていませんけど…」と少し動揺した。すると、ウェイトレスは笑顔で続けた。「アンコールトーイは美しい遺跡ですよ。一度行ってみてください」と。

後日知ったことだが「アンコールトーイ」とはシェムリアップ州近辺で用いられる地元民によるアンコールワットの呼び名である。

「アンコールトーイ」遺跡訪問を楽しむ観光客
「アンコールトーイ」遺跡訪問を楽しむ観光客

庶民感覚では、遺跡名は不要でバイヨンを意味する、トム(=大きい)とトーイ(=小さい)で区別すれば十分なのであった。

以来私は「地元民の言葉に耳を傾ける」ことを大切にするよう心がけている。

(この記事は2017年6月に発行されたNyoNuym89号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

コラムニスト: 三輪 悟(みわ・さとる)

上智大学アジア人材養成研究センター(シェムリァップ本部)助教
1997年10月よりシェムリァップ在住。専門はアンコール建築学。NyoNyum89号(2017年6月号発行)より遺跡やカンボジア生活にまつわる本コラム『アンコール見聞録』を連載。

 

次の記事:

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

関連記事
おすすめ記事