(日本語) アンコール見聞録 #18 オリンピックスタジアム(プノンペン)
(日本語) アンコール見聞録 #18 オリンピックスタジアム(プノンペン)
2020.05.04

NyoNyum Magazine にて連載しているコラム「アンコール見聞録」

上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者として、シェムリアップでアンコール建築に関する研究を行っている三輪悟さんが、アンコール建築の歴史や、遺跡の周りで営まれる生活、カンボジアにまつわるあれこれを綴ります。

今回は、プノンペン中心部にあるオリンピックスタジアムについて。

 

オリンピックスタジアム(プノンペン)

荘厳さすら感じる建物内観(2015 年7 月)

カンボジアの首都プノンペンにオリンピックスタジアムと呼ばれるスポーツ施設がある。

カンボジア生まれの建築家ヴァン・モリヴァン氏(1926-2017)が基本設計を行い1964 年に竣工した氏の代表作の一つだ。

設計に際しては、扉をくぐると目の前に広がる空間や池の配置、土盛り等、アンコールワットからインスピレーションを得ていることが知られ、ダイナミックさと荘厳さを兼ね備える。

近年の開発により周囲に高層建築が立ち並び設計意図の一部は現在では失われている。

ヴァン氏はアンコール遺跡群を保護する国立アプサラ機構の初代総裁(1995-2001)を務め、アンコール遺跡群の保護に尽力した。

またシェムリアップ市からコンポンクデイ間の国道6 号線の整備事業に際し、11 の古代橋にう回路を設けたのは氏の英断であった。

引退後もアンコールワット西参道をしばしば訪れ作業員を激励する真摯な姿に筆者は心打たれた。

現代建築家ながら古代建築技術の粋に触れ「アメージング!」と繰り返す彼の力強い言葉が今も耳に残る。

氏は生前シェムリアップに卒塔婆を建設している。上智センターにほど近いエンコセイ寺の境内にあり、昨年の三回忌は家族のみで静かに執り行われた。

氏の遺跡保護への偉大な貢献に心より御礼申し上げます。有難うございました。

エンコセイ寺でのヴァン氏の三回忌(2019 年9 月)

 

(この記事は2020年4月に発行されたNyoNuym106号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

 

コラムニスト: 三輪 悟(みわ・さとる)

上智大学アジア人材養成研究センター(シェムリァップ本部)助教
1997年10月よりシェムリァップ在住。専門はアンコール建築学。NyoNyum89号(2017年6月号発行)より遺跡やカンボジア生活にまつわる本コラム『アンコール見聞録』を連載。

 

 

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過去の記事

7:死んだカエルと干しガエル
8:アンコールワットの矢ワニ
9:西参道正面北側のナーガ
10:石の穴 あいたり、消えたり
11:遺跡内は犬禁止
12:米価が3倍になる継続性
13:外国人の遺跡入場者数
14:仏人がジャワに学んだ修復手法
15:アンコールワットの睡蓮
16:大阪万博 旧カンボジア館
17:アプサラ機構創設25周年

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