NyoNyum Magazine にて連載しているコラム「アンコール見聞録」
上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者として、シェムリアップでアンコール建築に関する研究を行っている三輪悟さんが、アンコール建築の歴史や、遺跡の周りで営まれる生活、カンボジアにまつわるあれこれを綴ります。
ニョニュムとの思い出
山崎幸恵さんとの出会い
紙面発行の最後の寄稿として「ニョニュムとの思い出」とのタイトルを頂いた。ニョニュムとの思い出を遡ると、当然のことながら発行者である山崎幸恵さんに行き着く。敬愛する山崎さんと初めてお会いしたのはいつだったであろうか。記録に残る限り、1999 年 9 月 25 日に「プノンペンにて山崎さんとタイスキを食べた」とのメモ書きが残る。当時、何の話をしたのか詳しくは憶えていないが、山崎さんから「カンボジアへの熱い思い」を聞いたことを覚えている。
ニョニュム誕生に際し
2003 年 10 月某日、山崎さんよりお電話を頂きシェムリアップでお会いした。そしてこの時、ニョニュム創刊の抱負を聞いた。私は必要に応じた協力を申し出て、早速翌 11 月にニョニュムのプレスカードを頂き、アンコールワットでの東儀秀樹さんのコンサートを撮影して写真を紙面に提供した。山崎さんからは撮影用のフィルムが提供された。当時はまだ夜の撮影に耐えうるデジカメを所有していなかった。
月刊で発行すると聞き、「締め切りに追われて難しいと思いますよ」とお伝えしたが、やはり後日隔月発行に変更された。現実に即して変化できるのが山崎さんの長所と言える。
京都での講演聴講と 100 号記念イベントでの返礼
2016 年 11 月、私は京都府八幡市で知人が経営するカフェのオープニングを祝うつもりで記念講演を行った。このとき山崎さんは滞在先の岡山から新幹線で駆けつけてくれた。何てフットワークの軽い方なんだろうかと感激した。
後に 2019 年 4 月、ニョニュム紙 100 号発行の記念イベントがプノンペンで行われ、私は返礼のつもりで参加し対談させていただいた。2003 年 10月から始まったニョニュム紙が 100 号であるのに対し、私自身 1999 年5 月現地駐在を開始した時からつけている日誌はこのとき 136 冊目であった。
継続は力なり
管見の限り、カンボジアにおける日系フリー紙で 20 年間(127 号)続いた事例はニョニュムのほかに知らない。何といっても、山崎さんはじめ、ニョニュム発行に携わってきた関係者の皆さん全員に「心よりお疲れ様」と申し上げたい。コロナ禍だけではなく、幾つもの困難があり、乗り越えてきたであろうことは容易に想像がつく。
時は過ぎ、私の手帳も連番 159 冊目となった。これまですべて同じ手帳を使い続けてきたが、メーカー事情で製造中止となり、手元に残るは二冊のみとなった。同い年のイチローの名言「変わらなきゃ」が頭に浮かぶ。更に話は飛躍するが、上智大学が 1996 年より継続するアンコールワット西参道の修復工事は、本年 11 月初頭に完成式を行う。その後西参道は一般開放するので、ここで予告しておきたい。
Have a nice day !
(この記事は2023年10月に発行されたNyoNuym127号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
上智大学アジア人材養成研究センター(シェムリアップ本部)助教
1997年10月よりシェムリアップ在住。専門はアンコール建築学。NyoNyum89号(2017年6月号発行)より遺跡やカンボジア生活にまつわる本コラム『アンコール見聞録』を連載。
前の記事:
過去の記事
7:死んだカエルと干しガエル
8:アンコールワットの矢ワニ
9:西参道正面北側のナーガ
10:石の穴 あいたり、消えたり
11:遺跡内は犬禁止
12:米価が3倍になる継続性
13:外国人の遺跡入場者数
14:仏人がジャワに学んだ修復手法
15:アンコールワットの睡蓮
16:大阪万博 旧カンボジア館
17:アプサラ機構創設25周年
18:プノンペンオリンピックスタジアム
19:新型コロナとアンコール観光
20:聖山クーレンでのキャンプ体験に想う
21:聖山クーレンでのキャンプ体験に想う(続編)
22:統計に見るウイズ・コロナのアンコール観光
23:スラスラン中央寺院(仮称)の復元・再構築
24:新型コロナ一年
25:紙幣の図柄をよく見ると
26:遺跡修復新時代
27:レッドゾーン指定でついに修復作業がストップ
28:観光の再開
29:変わるもの、変わらないもの
30:クメール正月再び♪(2022)
31:遺跡を空から見てみると
32:統計に見るコロナ禍からのアンコール観光回復度
33:在住外国人への遺跡無料パス発行と世界文化遺産登録30周年
34:遺跡写真館
35:アンコール遺跡群の世界遺産登録30周年記念イベント報告
36:東南アジア競技大会(Southeast Asian Games = Sea Games)聖火リレー
37:東南アジア競技大会(Southeast Asian Games=SEA Games)マラソン
38:遺跡を上から見る
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