NyoNyum Magazine にて連載しているコラム「アンコール見聞録」
上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者として、シェムリアップでアンコール建築に関する研究を行っている三輪悟さんが、アンコール建築の歴史や、遺跡の周りで営まれる生活、カンボジアにまつわるあれこれを綴ります。
今回は、アンコール遺跡群の世界遺産登録と日本が世界遺産条約を締結するまでについて。
カンボジアは日本の先輩!?

1993年に世界文化遺産登録された姫路城
1992年12 月14日、アンコール遺跡群はユネスコの世界文化遺産に登録された。今年で丸 25年の年月が経ったことになる。
実は1992年当時、日本にはまだ世界遺産登録案件は一つもなかった。一体どういうことなのか?
カンボジと日本の登録前後を比較すると下の表のようになる。
カンボジア | 日本 | |
条約締結年 | 1991 | 1992 |
登録一号 | アンコール遺跡群 | 姫路城ほか |
登録年 | 1992 | 1993 |
現世界遺産保有量 | 3 | 21 |
上智大学の石澤教授は、1980 年いち早くアンコール遺跡群調査を再開した。
1989年よりバンテアイクデイ寺院を調査研究対象に選定し、1991年よりプノンペン芸術大学の学生研修(人材養成)を開始した。
他方、1988 年 5 月、竹下登首相はロンドンでの演説において国際協力構想として「国際文化協力」を掲げた。
これを受けて日本政府は1989 年からユネスコの文化遺産のための日本政府信託基金への拠出を始めた。
その後1992 年に世界遺産条約を締結し、1993年に日本初の世界遺産が誕生するに至った ので ある。
アンコール遺跡群登録の1年後のことであった。
(この記事は2017年12月に発行されたNyoNuym92号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
上智大学アジア人材養成研究センター(シェムリァップ本部)助教
1997年10月よりシェムリァップ在住。専門はアンコール建築学。NyoNyum89号(2017年6月号発行)より遺跡やカンボジア生活にまつわる本コラム『アンコール見聞録』を連載。
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4:カンボジアは日本の先輩!?
