NyoNyum Magazine にて連載しているコラム「アンコール見聞録」
上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者として、シェムリアップでアンコール建築に関する研究を行っている三輪悟さんが、アンコール建築の歴史や、遺跡の周りで営まれる生活、カンボジアにまつわるあれこれを綴ります。
今回は、カエルからみる異文化について。
死んだカエルと干しガエル
十数年前のとある暑い日のことであった。アンコールワットの環濠を縁取る砂岩の石積みの上を歩いていると、一匹のカエルが死んでいた。そこで死骸を片付けようとすると、傍らの男が「違うんです」と言う。
果たして何が違うのか ? と思うと、「干しているんです」と言う。「ああ、そうだったのか ?」と私は自身の知識の欠如と浅はかさを恥じた。
片やカエルを食す文化を基本的に持たない日本人、片やカエルを日常的に食べるカンボジア人、両者が同じものを見ても捉え方が異なるのは至極当然のことなのである。
ここは日本ではなく、気候風土も人種も異なるカンボジアなのだ。異文化というものは、正にこのようなものである。
異文化間の見解の相違については、実際のところ、どちらが正しいとも、間違っているとも言い難い場合が多い。価値観や好みの問題であることが理由。
相手の文化を双方向に尊重すること、これが国際社会での取るべき基本姿勢ではないだろうか。
(この記事は2018年6月に発行されたNyoNuym95号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
上智大学アジア人材養成研究センター(シェムリァップ本部)助教
1997年10月よりシェムリァップ在住。専門はアンコール建築学。NyoNyum89号(2017年6月号発行)より遺跡やカンボジア生活にまつわる本コラム『アンコール見聞録』を連載。
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過去の記事
1:アンコールトーイに行ったことありますか?
2:「今日はいい天気?」~日本とカンボジア~
3:あれから20年
4:カンボジアは日本の先輩!?
5:アンコールワット西参道前の広場
6:アプサラ機構専門家による熊本視察
7:死んだカエルと干しガエル
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