2003年のNyoNyum創刊当初から連載している「ボンユキエッセイ」。
カンボジアに長年住むと街の移り変わりが見えてくる。
おもしろくもあり、どこかもどかしくもある。
通訳、翻訳、会社経営に奮闘中のボンユキこと山崎幸恵がおくるカンボジアあれこれ。
今回は最近、世間を騒がせている病原体の情報についてのお話です。
病原体と情報と人の噂
思い起こせばカンボジアで暮らして26 年の間に、様々な病原体が人々を恐怖に陥れている。
ニョニュムが創刊されて間もないころ、カンボジアでは近隣国で鳥インフルエンザが大流行し、大騒ぎとなっていたことがあった。
当時はインターネットもあまり浸透しておらず、情報は新聞やテレビでしか得られないような状態。国中が不安に陥った。
それから、世界を恐怖に陥れたSARSの流行があった。
幸い、カンボジアでは大きな影響はなかったものの、あのころ世間では「緑豆を食べるとSARS にかからない」なんて噂が広がった。
ある晩、国内の都市部では電話が混線する現象が起きた。何が起きているのかと思いきや、夜中じゅう「緑豆」を求めて人々が屋台を歩き回り、閉まっている穀類商店をたたき起こして「緑豆」を買い求め、まだ出来上がっていない「緑豆粥」を半生のまま泣きわめく子の口に無理やり押し込む…という大パニックが起きていたのだ。
「緑豆」の価格は急高騰。緑豆成金が生まれたかどうかは知らないが、実際に私もあの夜は「電話が通じにくい」と感じていたものだ。
「そういえばあのころ緑豆が市場からなくなり、次第にもやしも手に入らなくなったよね」なんて、そんな思い出話も出てくるほど。なんとも大騒ぎだった。
さらには炭疽菌の恐怖が世界を駆け巡ったこともあった。
カンボジアでは影響はなかったけれども、やっぱりおかしな現象が起きていた。
新聞記事に「世間では、炭疽菌が郵便やメールで送られてくると怖がっている人がいる」とある。
ん? 郵便はともかくメール?
だがそれは、そんな話が閣議で取り上げられたという記事だった。
閣議で「郵便やメール」で送られてくると言っていたというのも変だし、それをそのまま記事にしている新聞もどうしたものかと思ったけども、実際に私の周りにも「怖くてメールを開けられない」と言っている人がいた。
多分インターネットのウイルスと間違ったのではないかと思うんだけど…。
そして新型コロナウイルス感染症。
マスク、消毒液、手袋、学校の休校、行動制限、国境封鎖と、カンボジアでも日を追うごとにいろんなことが伝えられているが、これまでと違うのは「情報」がタイムリーに入ってくるということ。
一般のカンボジア国民が毎日この情報に触れ、そして対応をしているように思える。
一方で、このウイルスの正体そのものが分からない中、さすがに緑豆やメールといった噂は起きていないものの、あまりにも全世界的規模な問題であり、その情報がどんどん入ってくるがために不安があおられてしまっているのも否めない。
「確かな情報と判断力」。
新たな病原体との闘いにはこれが必要と、26 年間の病原体を巡るカンボジアを見てつくづく思う。
Cambodia Joho Service 代表
/日本カンボジア通訳翻訳家
神奈川県出身。在カンボジア歴、足掛け25年。
翻訳、通訳のほかカンボジア関連のアレンジやコーディネートを手がけることも。
仕事に追われつつも、大好きなビールは絶対に欠かさない。
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