2003年のNyoNyum創刊当初から連載している「ボンユキエッセイ」。
カンボジアに長年住むと街の移り変わりが見えてくる。
おもしろくもあり、どこかもどかしくもある。
通訳、翻訳、会社経営に奮闘中のボンユキこと山崎幸恵がおくるカンボジアあれこれ。
今回は、「オンラインの呪縛??」について。
オンラインの呪縛??
新型コロナウイルス感染症の発生から2年が経過。1年目は、世界中が何が何だかわからない中、いろいろな対策をしながらも、果たしてこの感染症はすぐに収束するのか、それとも長期的な戦いになるのかと事態を見守るような状況だったと思います。
しかし、変異株が次々に発生し、どうやらこれは長期戦なのだと世の中が認識し、私の仕事の環境も大きく変わりました。
ウィズコロナ。そんな言葉が定着する中、通訳の仕事はオンラインが主流になり、通訳者もそれに適応しなければならなくなっています。
Zoom、Teams といったオンライン会議ツールから、LINE、Messenger、Telegram といった各種連絡ツール。私自身もこれらを駆使していろいろな通訳や連絡をしているのですが、ある意味便利な手段にも、いろいろな落とし穴があることを実感する日々。
通訳の場面で言えば、Wi-Fi 環境の問題や、カンボジアならでは? の停電の問題に悩まされ、通訳以外のところで神経をすり減らすことに違和感を覚えるのです。
同時通訳の案件があると、事前に何度もリハーサルをします。カンボジア語・日本語の2か国語の時もあれば、国際会議で多言語同時に言葉を発信する時もあります。
逐次通訳と同時通訳を行うこともあり、事前リハーサルはどうしても「オペレーション方法の確認」に関係者全員の意識が集中するのです。
リハーサルを重ね、関係者全員がオペレーション方法を確認し、なんだかそれだけでそのセミナーや会議が成功したように思えてしまう。
「え、でもこれって、セミナーや会議の中身の確認まで行っていないよね?」。
そんな違和感を覚えながら、仕方なく私も本番に臨みます。
でも、これって本当にいいのだろうか。セミナーや会議の中身を伝えるのは私たち通訳者の役割です。対面であれば、講師のそばで事前に確認をしたり、セミナーや会議進行中にも質問をしたりして伝える内容を深めていけるのに…。
オンラインは確かに便利です。セミナーや会議のために飛行機に乗って大勢が出張してくる必要もないので、旅費や宿泊費が省けます。
でも、その分通訳者はかなり孤独な中でセミナーや会議に臨まなければならず、それは大きなプレッシャーです。それに加えてヘッドセットでずーっと日本語・クメール語を聞いて、言葉を発するのはかなり耳や脳に負担がかかる。
その中で、オンラインツールの機能を操作したり、不具合があった時は担当者に別の手段で連絡を入れたり…。いやぁ、あまりこの状態が長引くのはもう勘弁!
早く対面で仕事ができる状況になるよう、本当に、心から、心の奥底から願う今日この頃です。
Cambodia Joho Service 代表
/日本カンボジア通訳翻訳家
神奈川県出身。在カンボジア歴、足掛け28年。
翻訳、通訳のほかカンボジア関連のアレンジやコーディネートを手がけることも。
仕事に追われつつも、大好きなビールは絶対に欠かさない。
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