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どうしましたか #26 ビタミン C 神話

NyoNyum Magazine にて連載している医療コラム「どうしましたか」

ケン・クリニック院長の奥澤健氏が、流行病の対策、風邪やけがの処置方法から、病院での出来事、おすすめのダイエット方法までいろいろな医学トリビアを愉快に綴ります。

今回は、カンボジアで処方される薬と先生の思い出について。

ビタミン C 神話

カンボジアの地元の医師が処方する薬で共通するものがある。ビタミンCだ。

かぜでも、腹痛でも、骨折でも、たくさん出す薬の中に必ずといっていいほどビタミンCが入っている。
下痢のときには処方されないが、点滴の中に注射薬のビタミン C を入れるらしい。

どう考えても意図がわからないので、当院のカンボジア人看護師たちに聞いてみた。
「パワーをつけるため」
「抗生剤といっしょに飲むと効果的」
という答えが返ってきたが、よけいにわからなくなった。ビタミン C にそんな作用はないからだ。

しかし、ふと自分が新人だった 26 年前を思い出した。先輩医師に指示されて全身麻酔の手術後の患者さんの点滴には必ずビタミンBとCを入れていた。「術後の食事が始まるまでは点滴に栄養を入れる」という理由であった。

またどんな病気でも内服薬にはたいてい胃薬を入れるように言われたが、これは「薬の副作用で胃炎を起こすのを防止する」と説明された。

だが、そのわずか 1 年後に日本の医療保険が大転換されて、ほとんどの病院で術後点滴にビタミン剤を入れたり、やたらと胃薬を処方したりすることを止めてしまった。
「術後の患者さんは大丈夫か ? 外来で胃の不調を訴える人が続出するのでは ?」と不安に思ったが、何も起こらなかった。つまりこれらは全く不要であったということだ。

現在、胃の病気以外で胃薬を処方するのは『解熱鎮痛剤やステロイドなど高率に胃炎を起こす薬』とともに出すときのみである。カンボジアでも「昔はなんでもかんでもビタミンCだったね」と懐かしむ日がくるのであろうか ?

(この記事は2014年10月に発行されたNyoNuym73号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

コラムニスト:奥澤 健(おくざわ・けん)

医学博士
2010 年 2 月よりプノンペンにケン・クリニックを開業。1963 年生まれ。東京医大卒。キズを早くきれいに治す「湿潤療法」と医学的に正しい 「低糖質ダイエット・健康法」を指南。NyoNyum48号(2010年8月発行)より本コラム連載。

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