(日本語) どうしましたか #47 猫に咬まれて失明!
(日本語) どうしましたか #47 猫に咬まれて失明!
2020.02.01

NyoNyum Magazine にて連載している医療コラム「どうしましたか」

ケン・クリニック院長の奥澤健氏が、流行病の対策、風邪やけがの処置方法から、病院での出来事、おすすめのダイエット方法までいろいろな医学トリビアを愉快に綴ります。

今回は、猫の口に住んでいる菌が起こす病気について。

猫に咬まれて失明!

カンボジアで猫を飼っている家は多い。

ペットとして飼うというよりは、「ネズミを捕ってくれるから」というのがその主たる理由らしい。

なので、ほとんどが「元」野良猫である。
家の内外を自由に行ったり来たりしているのは「半」野良猫であると言えるであろう。

このような猫に手や足を咬まれると、その部位が数時間で赤く腫れあがることがある。
痛みが強烈で、局所の熱感または発熱を伴う。
蜂窩織炎である。

猫の口の中にはパスツレラ菌という細菌が 70 ~ 90% の高率で常在している(ちなみに犬の口の中には 50 ~ 60%)。
鋭い牙でガブッと咬まれると、この菌を注射した形となってしまう。

猫にとっては常在菌なので症状を起こさないが、人間にとっては病原菌であるので様々な症状を引き起こす。

蜂窩織炎の他に、菌が呼吸器に入ると気管支炎や肺炎を起こす。
また非常にまれではあるが、菌が血管の中で増殖して敗血症から網膜動脈閉塞症を起こし、突然失明してしまうことがある。
最近日本で報告例があった。

日常の診療で、最もよく診るのは上記の蜂窩織炎である。

抗生剤を投与しながらドレナージ(膿を体外に排出させる)を行うが、ひどい場合には 1 週間ほどの入院が必要になることもある。

予防は、猫を寝室に入れない、一緒に寝ない、キスをしない、口移しでエサを与えない、などである。
もし咬まれたら、速やかに医療機関を受診することだ。

(この記事は2018 年4 月に発行されたNyoNuym94号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

コラムニスト:奥澤 健(おくざわ・けん)

医学博士
2010 年 2 月よりプノンペンにケン・クリニックを開業。1963 年生まれ。東京医大卒。キズを早くきれいに治す「湿潤療法」と医学的に正しい 「低糖質ダイエット・健康法」を指南。NyoNyum48号(2010年8月発行)より本コラム連載。

ケン・クリニックホームページ

 

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38:世界三大感染症 その②エイズ
39:世界三大感染症 その③マラリア
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41:「消化の良い食べ物」とは?
42:インフルエンザ予防は年2回のワクチンで
43:飲むなら「ゼロ」
44:イボはテープで治せる!
45:ジカ熱がカンボジアに!?
46:子どもの食物アレルギーの原因と予防法
47:猫に咬まれて失明!

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