NyoNyum Magazine にて連載している医療コラム「どうしましたか」
ケン・クリニック院長の奥澤健氏が、流行病の対策、風邪やけがの処置方法から、病院での出来事、おすすめのダイエット方法まで「カンボジアにおける医療のよしなしごと」を愉快に綴ります。
今回は、カンボジアで発生した狂犬病に関する流行について。
狂犬病ワクチンがない !?
狂犬病ワクチンがない!
カンボジアのほとんどの医療機関で底をついている。
これを書いている 5 月中旬の時点でもまだ全く入荷していない。
なぜか?
それは、10 才の女児がネコに咬まれて、58 才の男性が自分の飼いイヌに引っかかれて、いずれも狂犬病で死亡し、そのニュースを聞いた国民がパニックを起こし、医療機関に狂犬病ワクチンを求めて殺到したためである。
筆者のクリニックにも動物に咬まれた、あるいは引っかかれたという患者が大勢受診した。
たいていは「どこに傷があるの?」というような、ごくわずかな痕であった。
確かに、甘噛みでも、傷を舐められただけでも感染するので、気持ちは理解できる。
しかし今までなら気にもとめなかったはずの小さい傷である。
パスツール研究所(Institut Pasteur du Cambodge)によると、カンボジアでは年間 800 人以上が狂犬病の犠牲となっているので、これを機に国民を啓発したい考えである。
全世界では毎年5 万人以上が死んでいる。
イヌやネコだけでなく、サル、ウシ、ウマ、キツネ、タヌキ、ウサギ、ネズミ、リス、コウモリなどすべての哺乳類が宿主となり得る。
発症したら最後、治療法がなくほぼ 100% 死亡する恐ろしい病気なので、ワクチンだけが頼りである。
一日も早いワクチン入荷と、国民の意識向上を願ってやまない。
しかし、熱しやすく冷めやすい(日本人もそうだと思うが)この国の人たちのこと、そのうちこの騒動とともに記憶も薄らいでしまうのではないかと懸念する。
(この記事は2019年6月に発行されたNyoNuym101号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
医学博士
2010 年 2 月よりプノンペンにケン・クリニックを開業。1963 年生まれ。東京医大卒。キズを早くきれいに治す「湿潤療法」と医学的に正しい 「低糖質ダイエット・健康法」を指南。NyoNyum48号(2010年8月発行)より本コラム連載。
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44:イボはテープで治せる!
45:ジカ熱がカンボジアに!?
46:子どもの食物アレルギーの原因と予防法
47:猫に咬まれて失明!
48:麻疹ワクチンをうちましたか?
49:ざんねんな(?)デング熱ワクチン
50:風疹ワクチン「も」うちましたか?
51:手足口病は大人にもうつる!?
52:食あたりに気をつけて!
53:クリニック開業とインタビュー
54:狂犬病ワクチンがない!?
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