NyoNyum Magazine にて連載している医療コラム「どうしましたか」
ケン・クリニック院長の奥澤健氏が、流行病の対策、風邪やけがの処置方法から、病院での出来事、おすすめのダイエット方法まで「カンボジアにおける医療のよしなしごと」を愉快に綴ります。
今回は、ケン先生が問診に苦戦しているというカンボジア人のある特性について。
問診不可能なカンボジア人患者(前編)
初診の患者さんには「今日は、どうしましたか ?」から始めて、いろいろ質問して徐々に診断を絞っていく。
たとえば『腹痛』なら、いつから、どの部位?痛みの程度は?空腹時か食後か ?ずっと続くのか?時々なのか?吐き気、嘔吐の有無、便の性状と回数などを尋ねる。
一般的にはだいたいこの『問診』で診断がつく。
日本人の場合は、である。
ところがカンボジア人の場合はそうはいかない。
現在の症状以外のことも、時系列バラバラに話すのでものすごく時間がかかる。
たとえばこんな感じである。
「20 年前に階段から落ちて腰を打った。1 ヶ月前から胃の調子が悪い。10年前から高血圧の市販薬をのんでいる」
(端的に書いているが実際はもっと長い)
「そうですか、では今日は腰と胃と血圧の相談でいらしたのですね ?」
「いや、昨日から風邪をひいたので来た。今、腰は痛くないし、胃の調子も良くなった。血圧はこの薬で大丈夫だ」
当院では、カンボジア人看護師が英語で私に通訳するので、最初は「言葉の問題」だと思っていた。
しかしそうではなく看護師も患者の言ったことをそのまま訳しているだけだと、すぐに気がついた。
時間が 2 倍になっただけである。
そこで看護師に「患者さんの言うことを要領よくまとめてから報告しなさい」と指示しているのだが、これが非常に苦労するようなのだ。
どうして ?と思っていたのだが、最近ある人材派遣会社のニュースレターで、日本語の堪能なカンボジア人スタッフが書いた記事に答えがあった。
次号では、この記事内容を踏まえて私なりの考察を述べる。
(この記事は2019年10月に発行されたNyoNuym103号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
医学博士
2010 年 2 月よりプノンペンにケン・クリニックを開業。1963 年生まれ。東京医大卒。キズを早くきれいに治す「湿潤療法」と医学的に正しい 「低糖質ダイエット・健康法」を指南。NyoNyum48号(2010年8月発行)より本コラム連載。
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47:猫に咬まれて失明!
48:麻疹ワクチンをうちましたか?
49:ざんねんな(?)デング熱ワクチン
50:風疹ワクチン「も」うちましたか?
51:手足口病は大人にもうつる!?
52:食あたりに気をつけて!
53:クリニック開業とインタビュー
54:狂犬病ワクチンがない!?
55:熱がないのにデング熱
56:問診不可能なカンボジア人患者(前編)
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