カンボジア生活情報誌NyoNyum Magazine にて連載している医療コラム「どうしましたか」
ケン・クリニック院長の奥澤健先生が、流行病の対策、風邪やけがの処置方法から、病院での出来事、おすすめのダイエット方法までいろいろな医学トリビアを愉快に綴ります。
今回は、ワクチンの有効率についてです。
数字に惑わされるな !「ワクチンの有効率」とは ?
11 月 9 日、米国の大手製薬メーカーのひとつファイザー社が「臨床試験段階の暫定結果」としながらも「新型コロナワクチンの有効率が約 90%」と発表した。
多くの人が「これを接種すれば 90% コロナ感染を防げる」と思ったのではないか?
しかし、そうではないことを解説しよう。
「ワクチンの有効率」は下記 4 つの割合が基本となる。
a:ワクチンあり+感染なし
b:ワクチンあり+感染あり
c:ワクチンなし+感染なし
d:ワクチンなし+感染あり
「ワクチンの有効率= a」と思ってしまう人が多い。
ところが、「ワクチンの有効率= 1 - b/d」なのである。言い換えると、ワクチンを接種せずに感染した人が、もしワクチンを接種していたらどれくらい感染せずにすんだか ?(どれくらい感染を減少させたか ?)ということである。
ファイザー社の結果は、総被験者 4 万 3,538 人を半分の 2万 1,769 人ずつの 2 グループに分け、ワクチンあり+感染ありは 9 人、ワクチンなし+感染ありは 85 人である。
これを上記の計算式に当てはめると、1 - 9/21,769 ÷ 85/21,769=0.894で有効率は 89.4% となり、有効率という言葉の定義上は正しい数値だ。
一方、ワクチンありで感染なしの人は 21,769 - 9=21,760 人、ワクチンなしで感染なしの人は 21,769 - 85=21,684 人である。
すなわちワクチンありでは 99.9%(21,760/21,769=0.999)が、ワクチンなしでは99.6%(21,684/21,769=0.996)が感染しなかったということになる。
その差は 0.3%。ワクチンを接種すると感染するリスクが 0.3% 減るということだ。
別の見方をすると、ワクチンを接種してもしなくてもコロナに感染しない確率は 99.6%以上であるということである。
真に有効なコロナワクチンが普及する日は来るのであろうか。
(この記事は2020年12月に発行されたNyoNuym110号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は発行当時の情報です。)
医学博士
2010 年 2 月よりプノンペンにケン・クリニックを開業。1963 年生まれ。東京医大卒。キズを早くきれいに治す「湿潤療法」と医学的に正しい 「低糖質ダイエット・健康法」を指南。NyoNyum48号(2010年8月発行)より本コラム連載。
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51:手足口病は大人にもうつる!?
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53:クリニック開業とインタビュー
54:狂犬病ワクチンがない!?
55:熱がないのにデング熱
56:問診不可能なカンボジア人患者(前編)
57:問診不可能なカンボジア人患者(後編)
58:開業10周年を迎えて
59:新型コロナウイルス騒動に思う
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61:手洗い習慣の功罪
62:「with コロナ」でいきましょう♪
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