カンボジア生活情報誌NyoNyum Magazine にて連載している医療コラム「どうしましたか」
ケン・クリニック院長の奥澤健先生が、流行病の対策、風邪やけがの処置方法から、病院での出来事、おすすめのダイエット方法までいろいろな医学トリビアを愉快に綴ります。
今回は、最近カンボジアでも続出しているウイルス変異株について紹介します。
ウイルス変異株は怖いのか?
この原稿を書いている7 月中旬時点では、東京では緊急事態宣言下のオリンピック開幕目前で、コロナウイルス陽性者は再拡大している。
カンボジアでも連日900人前後の陽性者が出ている。現在の主流はδ株(いわゆるインド型)とよばれる変異株である。
WHOは「懸念される変異株や注目すべき変異株にギリシャ文字を使用する」としてα株(同イギリス型)、β株(同南アフリカ型)、γ株(同ブラジル型)に次いで命名したものだ。
このδ株は今までのものよりも「感染力が強い」「重症化しやすい」「ワクチンが効きにくい」などとされ、あちこちでメディアが喧しい。
しかし、本当にそうなのであろうか?
特に「重症化しやすい」というのは、確かにそのような報告はあるが、それだけを引用して(「致死率は低い」という報告もある)恐怖を煽っているように思えてしまう。
なぜなら一般的にウイルスというのは「感染力はより高く、致死性はより低く」変異していくものだからである。
要するに人間側からみると「うつりやすいけど、そう簡単には死なない」。
つまり『普通のカゼ』になっていくのである。
実際、死者が増加している国も少数あるが、新規陽性者は増えていても死者は減っているという国がほとんどである。
ウイルスは変異するもの。
でも懸念も注目もされずに変異して、早く消えていってほしい。
ギリシャ文字最後の『ω株』という名前は聞きたくない。
(この記事は2021年8月に発行されたNyoNuym114号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は発行当時の情報です。)
医学博士
2010 年 2 月よりプノンペンにケン・クリニックを開業。1963 年生まれ。東京医大卒。キズを早くきれいに治す「湿潤療法」と医学的に正しい 「低糖質ダイエット・健康法」を指南。NyoNyum48号(2010年8月発行)より本コラム連載。
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