どうしましたか #71 長引く咳「感染後咳嗽」とは?
どうしましたか #71 長引く咳「感染後咳嗽」とは?
2022.04.19

カンボジア生活情報誌NyoNyum Magazine にて連載している医療コラム「どうしましたか」

ケン・クリニック院長の奥澤健先生が、流行病の対策、風邪やけがの処置方法から、病院での出来事、おすすめのダイエット方法までいろいろな医学トリビアを愉快に綴ります。

今回は、”長引く咳「感染後咳嗽」”について。

 

長引く咳「感染後咳嗽」とは?

COVID-19 は、今やもうただのカゼである。カンボジアでも爆発的に陽性者は増えたが、ワクチンを接種している人はほとんど無症状か、ごく軽い症状ですんでいる。ワクチンを接種していないと高熱が出ることが多いが、解熱剤だけでも数日で回復する。この騒動もようやく「終わりの終わり」が見えてきた。

しかし、最初は症状がほとんどなかったのに途中で咳が出てきて長く続いたり、初めから咳もあって他の症状は治まったのに咳だけが残ったりする場合がある。「感染後咳嗽」という病態である。これは何もCOVID-19 に限ったことではない。

インフルエンザでも他のカゼでも、同様の症状をこのように呼ぶ。カゼをひくと気管・気管支の粘膜に炎症がおこる。次第に治癒していくのだが、まだ粘膜が荒れていて過敏になっている状態である。咽
がムズムズする、ふとしたことで咳が出る、いったん出始めるとなかなか止まらない、夜や朝に多い、というのが特徴だ。火事でいえば、火は消えたけれどまだくすぶっている状態である。

これが8 週間以上続くと「咳喘息」という病名がつく。咳喘息患者の約30%が「気管支喘息」に移行する。皆さんが「喘息」と呼んでいるのは「気管支喘息」である。感染後咳嗽の治療には咳止め薬だけでは効果がない。気管支喘息のときと同じ気管支拡張剤やステロイド吸入薬が使われる。長引く咳のある人は、ぜひ早めの受診をおすすめする。

(この記事は2022年4月に発行されたNyoNuym118号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は発行当時の情報です。)

 

コラムニスト:奥澤 健(おくざわ・けん)

医学博士
2010 年 2 月よりプノンペンにケン・クリニックを開業。1963 年生まれ。東京医大卒。キズを早くきれいに治す「湿潤療法」と医学的に正しい 「低糖質ダイエット・健康法」を指南。NyoNyum48号(2010年8月発行)より本コラム連載。

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48:麻疹ワクチンをうちましたか?
49:ざんねんな(?)デング熱ワクチン
50:風疹ワクチン「も」うちましたか?
51:手足口病は大人にもうつる!?
52:食あたりに気をつけて!
53:クリニック開業とインタビュー
54:狂犬病ワクチンがない!?
55:熱がないのにデング熱
56:問診不可能なカンボジア人患者(前編)
57:問診不可能なカンボジア人患者(後編)
58:開業10周年を迎えて
59:新型コロナウイルス騒動に思う
60:感染症に対するビタミンの不都合な真実。 オーソモレキュラーとは?
61:手洗い習慣の功罪
62:「with コロナ」でいきましょう♪
63:数字に惑わされるな !「ワクチンの有効率」とは?
64:「禁煙のススメ」
65:「トコジラミ」
66:「コロナワクチンをうってきた」
67:「ウイルス変異株は怖いのか?」
68:「中和抗体とは?」
69:「コロナの飲み薬、ついに市場へ !?」
70:「 オミクロン株は終わりの始まり」

 

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