どうしましたか #77 コレステロールの真実(後編)
どうしましたか #77 コレステロールの真実(後編)
2023.05.09

カンボジア生活情報誌NyoNyum Magazine にて連載している医療コラム「どうしましたか」

ケン・クリニック院長の奥澤健先生が、流行病の対策、風邪やけがの処置方法から、病院での出来事、おすすめのダイエット方法までいろいろな医学トリビアを愉快に綴ります。

今回は、「コレステロールの真実(後編)」についてです。

 

コレステロールの真実(後編)

HDL が低く、LDL と中性脂肪が高くても薬は必要ない。低糖質食にすればよい。

三大栄養素とは『タンパク質』『脂質』『炭水化物(糖質+食物繊維)』である。このうち血糖値を直接上げるのは糖質だけだ。だから血糖値を上げないようにするには、糖質を摂らないようにすればよい。できるだけ糖質を控えるのが低糖質食である。糖質を減らすと、必然的にタンパク質と脂質を食べる量は増える。いやむしろ高タンパク質+高脂質食でなければいけない。この二つの栄養素も減らしてしまうと、エネルギー不足となって体調が悪くなる。

肝臓で生成されるコレステロールが基盤にある上に低糖質食を開始すると、食材からのコレステロールが増える。さらに、小粒子 LDL は減るが標準大の LDL は増えるので、当初は血中のLDL が増加する。HDL は増加し、中性脂肪は減少する。悪玉の小粒子 LDL が減って、善玉の標準大 LDL が増えるのだから良いことなのであるが、血液検査では単に LDL が増加していることになるので、見かけ上はあまりよろしくない。

しかし肝臓はコレステロール生成を調整して減らしていくので、徐々に数値も落ち着いてくるのだが、1 年くらいかかる。気にしなければ良いだけなのだが、その間「会社や家族にうるさく言われるので、どうしても LDL を下げたい」という人がいる。そのような人には、巷でよく処方されるスタチン系よりも副作用の少ないエゼチミブ(日本の商品名「ゼチーア」)をお勧めする。

(この記事は2023年4月に発行されたNyoNuym124号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は発行当時の情報です。)

 

コラムニスト:奥澤 健(おくざわ・けん)

医学博士
2010 年 2 月よりプノンペンにケン・クリニックを開業。1963 年生まれ。東京医大卒。キズを早くきれいに治す「湿潤療法」と医学的に正しい 「低糖質ダイエット・健康法」を指南。NyoNyum48号(2010年8月発行)より本コラム連載。

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48:麻疹ワクチンをうちましたか?
49:ざんねんな(?)デング熱ワクチン
50:風疹ワクチン「も」うちましたか?
51:手足口病は大人にもうつる!?
52:食あたりに気をつけて!
53:クリニック開業とインタビュー
54:狂犬病ワクチンがない!?
55:熱がないのにデング熱
56:問診不可能なカンボジア人患者(前編)
57:問診不可能なカンボジア人患者(後編)
58:開業10周年を迎えて
59:新型コロナウイルス騒動に思う
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61:手洗い習慣の功罪
62:「with コロナ」でいきましょう♪
63:数字に惑わされるな !「ワクチンの有効率」とは?
64:「禁煙のススメ」
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66:「コロナワクチンをうってきた」
67:「ウイルス変異株は怖いのか?」
68:「中和抗体とは?」
69:「コロナの飲み薬、ついに市場へ !?」
70:「 オミクロン株は終わりの始まり」
71:「長引く咳「感染後咳嗽」とは?」
72:「 日本の水際対策とは何だったのか?」
73:「 今年還暦トム・クルーズの健康法とは?」
74:「いきなり、Cheat Day!」
75:「コレステロールの真実(前編)」
76:「コレステロールの真実(中編)」
77:「コレステロールの真実(後編)」

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