(日本語) 日本・カンボジア「カルチュア」徹底研究!~国際交流基金×NyoNyumコラボ企画~ ②運命の波に乗ってカンボジアに上陸!
(日本語) 日本・カンボジア「カルチュア」徹底研究!~国際交流基金×NyoNyumコラボ企画~ ②運命の波に乗ってカンボジアに上陸!
2021.01.25

日本の文化、カンボジアの文化と聞いて、皆さんはどんなことを思い描きますか?

文化は人類が、それぞれの地域や社会においてつくりあげ、伝承してきたもの。

異なる文化の中で育っていても、自分の考えを伝えることで共感しあい、新たな文化をつくりあげることもできます。

国際文化交流の専門機関として日本とカンボジアの交流に取り組んでいる国際交流基金プノンペン連絡事務所と、カンボジアの文化や社会を多面的に伝え続けてきたニョニュムが、旬の文化人や文化交流のキーパーソンをご紹介します。

 

運命の波に乗ってカンボジアに上陸!行德 浩二 監督

国際交流基金アジアセンターと日本サッカー協会がFFC(カンボジアサッカー連盟)に派遣している行德浩二(ぎょうとく・こうじ)監督のもとで、カンボジアのU-19 代表がAFF(ASEAN サッカー連盟)の大会でタイ、ベトナムを破りました。

また、AFC(アジアサッカー連盟)U-19 ユース選手権の予選では、タイ、北マリアナ諸島、ブルネイを破り、内戦後初めて今年ウズベキスタンで行われる予定の本選に出場することになりました。

サッカーの人気が高いカンボジアでは期待が高まっています。

いったい行德監督ってどんな人?

その魅力に迫ります!

 

Q 監督ご自身のサッカー人生についてお聞かせください。

1987年1月に日本代表の選手に起用されるも同年3月、ドイツに2年半移籍をしました。

そこに飛び込んでいき、実際にプレーしてみて、自分とほかの選手との差を感じました。

1989年6月に日本に帰って日本サッカーリーグのトヨタ自動車に入ったのですが、開幕3戦目で靱帯を断裂し、ほぼ1年かかって復帰したものの半年後に反対側の靱帯を切ってしまい、サッカー選手としての人生が終わりました。

ちょうど日本でJリーグが始まる頃でした。

その後、29歳の頃から指導者としての人生が始まりました。清水エスパルスの指導が14年といちばん長かったですね。

次第に海外での指導に興味を持ち、その後ブータン代表の監督として、2008年に渡航しました。

FIFAの加盟国・地域は210くらいですが、ブータンはそのランキングで下位のほうにありました。

しかし、着任1年目に南アジアサッカー選手権で予選を突破してトーナメントに入れたんです。

外国での試合で勝ったこと自体も初めてでした。

その後、再び日本に戻ることになり、2010年から2011年はJ1の大宮アルディージャでアシスタントコーチとして、2012年から2013年はJ2のFC 岐阜で監督を、その次の年に静岡大学の監督に就任し、1年間務めました。

次の年に、タイのアントーンFC というクラブチームから声がかかりました。タイ2部のチームで、1部に上がりたいという目標がありました。開幕5連勝して調子良く2位くらいを維持させることができました。

タイから帰国して半年くらい「主夫」をしていましたが、その後、2016年3月からネパール代表監督を2年半務めることになりました。

1年目にAFCソリダリティーカップというのがありました。アジアカップ予選、ワールドカップ予選を早々に敗退したチームを対象に、国際試合のチャンスを与える意味合いの大会です。優勝したんです!

2018年8月にはU-23アジア競技大会があり、日本代表チームと対戦することになりました。

ずっと押されっぱなしで負けはしましたが、結果は0-1で大奮闘でした。

その後、2018 年9 月に日本に戻り、再び「主夫」生活が始まりました(笑)。

それからカンボジアと巡り会いました。

日本サッカー協会は今、アジアの国に指導者を積極的に派遣していますが、私は2019年2月にU-19代表監督兼FFCアカデミーU-18 監督として派遣されました。

FFCが私をリスペクトしてくれます。去年のAFC U-19選手権予選突破の時も本当に感謝されました。

日本サッカー協会としても人的交流の目的を遂げられていると思います。

 

Q カンボジアサッカー界の将来性について、どう感じておられますか?

U-19代表チームに国民的スターがいます。ファンなら誰でも知っていると思いますが、チャンティアという選手です。

去年アカデミーを卒業し今はボンケットFCに所属していますが、彼のような選手を伸ばしたいと思っています。

カンボジアの代表チームの特徴は、守りに入る傾向が強い中で、チャンティアのような一発飛び道具が活かされます。

去年のAFC U-19選手権予選でタイに勝ったときも、彼の活躍がありました。

チャンティアは国の期待の星。彼がいい成功を収めればそれを目指す後輩が出てくる。

それは彼個人のためでもあり、カンボジアサッカーの底上げのためでもあるんです。

去年の快挙で現U-19のチームに対するカンボジアの人たちの評価はとても高いです。

しかし、カンボジアはまだまだ変わらなければならない。

この年代を鍛え、2023年のSEA Games(東南アジア競技大会)に臨まなければならない。

そしてもう一つ。2023年の後をも見据えて人材を育てなければならないと思っています。

今のカンボジアでは、子どもたちが基礎からきちんとサッカーを教わっていません。

日本は小学校低学年からやっています。ちゃんとした指導者もいます。

それでも世界に追いついていないんです。

 

Q カンボジアは小さい頃からの積み上げや基礎作りがないので、いきなり世界で戦えるわけではないということですか?

そうですね。基本をやっていないことが決定的な欠陥です。

タイにいて同じことを思ったのですが、子どもたちは諦めが早く、プロの選手でも同じことが言えます。

ここを変えたらその次が見えてくる。

では、どう変えていくのかというのが指導者の仕事です。

 

Q 1974 年以来、実におよそ半世紀ぶりにカンボジアのU-19 代表がAFC 選手権本戦に出場することになりましたが、どんな指導をされたのがこの成果に結びついたのでしょう?

以前より守備をするようになったんです。前はボールを取られたら終わりで、その後は諦めていました。

それが粘り強く頑張るようになった。あとは自信がついてきたのかなと。

その一番の要因は、昨年行われたAFF U-19ユース選手権の最初のオーストラリア戦で負け、次のタイに勝ったことですね。

私自身は、代表チームではモチベーターとしてポジティブ思考をチームに浸透させようとしていますが、アカデミーでは非常に厳しい指導をしています。

だからアカデミーの選手で代表にも選ばれている選手は、私の指導が代表とアカデミーで違うことを感じていると思います。

AFF U-19ユース選手権予選でオーストラリアに5-1で負けたときも、私は「ダメだった」とは言いませんでした。

「お前らできるよ」と言いました。

それが功を奏したのか、前向きに取り組んで、次の試合でタイに勝った。そういう経験をしていくうちに、自信を持ってきたと思うんです。

 

Q AFC U-19 選手権本戦に向けて、どこを強化するのですか?

技術、戦術、フィジカル全部です。技術は練習を続ければどこまででも上手くなりますが、伸びる時期、習得するに適した時期があります。

だからその時期を逃している今の選手たちは少しずつしか伸びません。

それを埋めるための指導をしてはいますが、やはり持久力はないですね。

ただ、私が監督に就任する前と比べると、断然良くなっています。

鍛えれば変わる。

そう実感しています。

 

Q 今後のカンボジアと日本のサッカー交流の展望や可能性について教えてください。

FFCが日本から学んでいることは多いと思います。

すべて日本と同じことをやればいいとは思いませんが、Jリーグができて短期間で成長をした国から学ぶことは多いと思うので、一緒にいい方向に持って行ければいいと思います。

コロナで実現しませんでしたが、去年はJICAから地方に協力隊員を派遣すべく募集をかけていました。

コロナ後にこれが動けば、村の子どもたちの可能性を広げることができます。

そして将来的には有望な選手が日本で活躍し、日本で成功してカンボジアに戻ってくる選手がどんどん出てきたらいいと思っています。

 

Q 日本人コミュニティーに向けて、一言お願いします。

カンボジアのサッカーをまだ知らない方には、少しでも興味を持ってもらいたいです。

チャンティアをはじめ、可能性のある選手や子どもたちをなんとか日本に送れないかと思っています。

学生としての留学、短期留学、スポーツ留学でも、なにか可能性があれば手を差し伸べてほしいです。

今2002年から2004年生まれの子どもたちが高校生なので、この時期にいい環境に置いてあげればまだくらいついていけるチャンスがあるんです。

カンボジアにいたら、どんどん日本の選手と離されてしまう。

毎年1人でも2人でも行けるルートができたら、その子がカンボジアのサッカー界にいい影響を与えてくれるし、全体的なレベルアップにつながります。

受け入れてくれる高校はあると思うんです。その資金サポートをどうにか得られないかと思っています。

日本のJリーグにもトップチーム以外にアカデミーのスポンサーを個別にやっている企業や個人の方々もいるので、カンボジアの子どもたちに対してそういう目を向けてくださる方がいれば、ぜひご支援をお願いします。

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