JICA海外協力隊員としてクラチェ州で育成年代の子供たちへのサッカー指導を行なっている宮城晃太さん。
年代別の各リーグ戦に参戦しながら、子供たちのサッカーの能力向上だけでなく、サッカーの素晴らしさを伝えることに全力を尽くしている。
クラチェには日本人はほとんどいませんが、彼のまわりにはたくさんのカンボジア人の仲間がおり、彼らとともにサッカーを通して日々、苦悩や喜びを共有し、かけがえのない時間を過ごしているという。
そんな宮城さんのクラチェでの奮闘記を今回からNyoNyum webで連載開始!
今回は先日開幕したアカデミーのリーグ戦の様子について紹介します。
リーグ戦開幕
12月29日、U-16(16歳以下)とU-18(18歳以下)のアカデミーリーグ2020が開幕しました。
本来は9月くらいに開幕すると言われていましたが延期となり、ようやくリーグ戦が開幕したと言う感じです。(去年も9月頃に開幕すると言いつつ、実際に開幕したのは12月みたいです)
カンボジアサッカーで日程変更は日常茶飯事です。笑
リーグ戦はU-16・U-18それぞれ、A~Gの7つのグループに分かれて予選リーグを行います。
クラチェアカデミーは、カンボジア東北部にある4州のチーム(クラチェ・ラタナキリ・モンドルキリ・ストゥントレイ)で、予選リーグを行いました。 上位2チームがセカンドリーグに進める事ができます。
【結果】
<U-16 >
クラチェ 3 – 1 ラタナキリ
クラチェ 1 – 1 ストゥントレイ
クラチェ 3 – 1 モンドルキリ
2勝1分(1位)
<U-18>
クラチェ 2 – 1 ラタナキリ
クラチェ 0 – 1 ストゥントレイ
クラチェ 1 – 0 モンドルキリ
2勝1敗(2位)
なんとクラチェアカデミーは、U-16は1位通過、U-18は2位通過でセカンドステージに進む事が決定しました。 これからセカンドリーグが行われるので、この連載で状況報告できればなと思います。 (ちなみに今の時点で次の試合がいつ行われるかわかりません。笑)
リーグ戦の運営は?
リーグ戦は試合がある州の教育省が運営します。 コート設営は試合前日にアカデミースタッフが、コートのライン引きを行なったり、ベンチを設営したりなどしています。
試合当日の審判・マッチコンディショナーなどは、サッカー協会から派遣されており、審判ライセンスをもっている審判がちゃんと来てくれます。
選手がちゃんと登録されているか確認する為に、選手IDを試合前にチェックしたりなど、不正がないか、審判・マッチコンディショナーがしっかり見てくれます。
このあたりはしっかりしているんです。
試合会場の様子
試合会場は、州が持っているProvincial Grandを使用しています。
アカデミーの公式戦となると、日本では芝生が手入れされていて、水が巻かれているような綺麗な芝生で、しっかりとしたスタンドがあるというイメージがあると思いますが、それには、程遠い環境で公式戦を行います。
芝生が枯れて土と混ざったようなグランド状況。 スタンドがあるグランドもありますが、屋根もなく日差しが当たり90分間観戦できるような環境ではありません。
ですが、観客は結構いるんです。 近隣に学校があるので、学校の友達や、サッカー好きのおっちゃんなどがサッカーを見にきます。
良いプレーが出ると女子中高生から、黄色い声援が起こるんですよ。
そりゃあ、選手もテンション上がりますよね。笑
ベンチは日よけがあるベンチが用意されますが、ボロボロです。
このような状況で公式戦を戦います。
しかし、選手、スタッフは、これが当たり前なので環境に対して何かを言うことは全くありません。
遠征事情
リーグ戦が始まると、試合を行なうために近隣の州に遠征に行きます。
今回のクラチェは、ラタナキリ、モンドルキリに試合を行いに行きました。
試合に連れて行く選手は、 U-16 (選手18名 スタッフ2名)、U-18 (選手18名 スタッフ2名)の合計40名の大移動になります。
交通手段は大型バンになります。U-16、U-18それぞれ1台ずつチャーターして移動します。 大型バンといっても、車内はぎゅうぎゅう状態です。※写真
運転席と助手席に4人乗ったり無理矢理、詰め込んで出発します。
その状態で3〜4時間、舗装されていない道を通ったりするので、お尻が悲鳴をあげます。笑
それでも、選手たちは元気なのでスピーカーを持参し、音楽を爆音で流し、みんなで熱唱します。
この光景も日本では見ない光景ですし、僕もいつも楽しませてもらっています。笑
遠征のスケジュールはどうなってるの?
試合がある時は試合前日に移動します。
朝、グランドに集合し、全員が集まるのを待ってから出発します。
もちろん、当たり前のように、集合時間を過ぎても来ない選手がいます。なんなら指導者が来ません。笑
なので、集合時間はあるようでないようなものです。
そして、選手は待っている間、写真撮影大会が行われます。
カンボジア人は写真が大好きで、自分たちのFacebookに投稿する為の写真を撮り合います。
もちろん、僕も選手が一緒に写真を撮りたいと言えば撮ります。(自分から言うことはありません)
全員が揃い、出発の準備ができたらやっと出発です。
バンを走らせて、お昼ぐらいになると通りかかったお店に入り食事をします。
食べるのはもちろん、カンボジア料理。
この時に選手の食べてるところにいき、『たくさん食わないと明日動けないぞー!たくさん食べろ!』と言いながらご飯を注ぐのも僕の仕事のひとつです。
ご飯を食べ終え、ゲストハウスに向かいます。
ゲストハウスに到着して、部屋の割り振りが終わると、そこから観光タイムが始まります。
夕方の練習時間まで時間がある為、その州の観光名所に行き、観光を楽しみます。
そこでも、写真撮影大会が行われます。 日本から来ている僕にとってはなかなか来れないような場所なので、ありがたい時間です。笑(試合のことは忘れてません)
練習時間になるとグランドに行き、約1時間ほど練習を行います。
夕飯はカテゴリー別に外に食べに行きます。
夜は基本、フリーです。 ですが、せっかく全員で試合をしに来ているので、ミーティングを各スタッフにするようにと言っています。
僕も選手を集めて、ホワイトボードで守備の仕方や、攻撃の仕方など全員がわかるようにミーティングングを行うようにしています。
試合当日、 U-16が先に試合を行います。
ここで、びっくりしたのが、キックオフが7:30ということ。いくらなんでも早過ぎますよね。笑
朝食は知り合いの人にお願いして、バイサイチュルー(豚の炭火焼と白米)を持ってきてもらい、グランドで食べます。(絶対この朝ご飯だけではいいパフォーマンスは出せません)
ラタナキリとの試合の時は、軽くハプニングもありました。頼んでいた朝ごはんが、試合の30分前に到着。 選手はアップを中断し、ご飯タイムに入りました。
こんな、メチャクチャな準備で、試合30分前にご飯を食べるなんてありえません。 試合に勝てるのか不安でしたが勝ちました。笑
次のU-18の試合は、9:30キックオフです。
9:30になると気温も上がり、30℃以上になります。
その中で90分闘わないといけないのでU-18の試合は大変ですよね。
両カテゴリーが終わると、クラチェに帰る用意をして帰ります。
以上が、遠征のスケジュールです。
日本と比べると、色々な文化の違いもあり、その文化に触れながらサッカーを通して教えられていることに感謝しながら今後も より良いチームにしていければなと思っています。
クラチェアカデミーのレベルって?指導者のレベルは?
これは皆さんが気になる事の一つだと思います。 クラチェの選手のほとんどは小学校、中学校とサッカーをちゃんとした指導者から教えてもらっていません。
もちろん指導者もサッカー経験はあるのですが、ちゃんとした指導法を学んでいません。 なので選手自体は好きでサッカーをしていて、指導者もサッカーが好きで教えているというイメージです。
アカデミーが設立されてから、指導者もライセンスを取得にチャレンジしたり、1年に1、2回サッカー協会が主催する指導者研修を受けに行ったりなどしていて、指導者も選手も徐々にレベルは上がってきていると思います。
僕が赴任した当初のクラチェアカデミーの選手レベルは、技術的な面ではサッカーで大事な蹴る、止めるができない。ボールが来たら前に蹴る。精神面もできない事はできない。すぐに諦めてしまいチャレンジ精神がないなという印象です。
日本で例えると、高校3年生の選手が中学3年生レベルと言う感じですね。笑
もしかするとそれ以下なのかもしれません。
ですが中には上手い選手もいるんです。これには僕も驚かされました。クラチェにも光る原石がいるんです。笑
それも次の連載で紹介していきたいと思います。
クラチェで暮らして1年が経った今はクラチェアカデミーの選手レベルは来た頃と比べると技術面、精神面もとても成長していると実感しています。
クラチェでの残り限られた時間を大切に活用し、少しでも選手達の夢の実現の手助けができたらと思います。
(写真提供:宮城晃太)
JICA海外協力隊員(クラチェ州)
1993年生まれ。沖縄県出身。大阪産業大学卒業後、2016年に地元のFC琉球(当時J3)に入団。同年限りで引退し、翌年からFC琉球アカデミーコーチを務めた。現役時代はMF。
SNS:Twitter
宮城さんのインタビュー記事はこちら
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