人は食うために働く。カンボジア人のそんな姿を切り取るニョニョムでおなじみのコーナー
「カーロッシー(食いぶち探し)」。今回は王宮前の祠で蓮の花を売るチャンティーさん。
カーロッシーとは
生活情報誌NyoNyumで長年人気を誇るコーナー「カーロッシー」。人は何のために働くのか。
カンボジアの人々の答えは明快、「食うため」。
彼らは、働くことを「カーロッシー(食いぶち探し)」と呼ぶ。汗と涙を流しながらも、日々淡々と行われるその営みを紹介する。
売り手と買い手は、縁があって出会うもの
カンボジアでは、“祈り”は身近な存在だ。
仏教国ゆえ寺院が全国に4,500以上あり、月に4〜5回ある仏日には熱心な仏教徒が祈りをささげに訪れる。
また、「ネアック・ター」と呼ばれる土地の精霊を信仰する習慣もカンボジアにはあり、仏教とは別ものだが同様に崇拝の対象になっている。
プノンペンの王宮前には、願いが叶うことで有名なネアック・ターをまつる小さな祠があり、開運を求めて毎日たくさんの人が訪れている。
いわばカンボジアのパワースポットだ。
そして人が集まる場所には、ビジネスチャンスを狙って商売人も多く集まってくる。
食べ物や雑貨などを売る露店が願いを叶えたいとやってくる人々とひしめき合い、このあたりは毎日大賑わいになっている。
そんな商売人の1人が、チューン・チャンティーさん(50)だ。ここで、ハスの花を売って4年になる。
もともと工場で清掃員として働いていたが、なかなか休みがとれずに健康に支障をきたすようになり、2016年に退職した。
今の仕事は、ここでハスの花売りをしている知人の誘いで始めたという。商売について何の知識もなかったが、やってみると「意外に楽だった」と話す。
まず、同業者の知人がやり方を教えてくれるし、花は自ら買い付けに行かなくても、業者がプノンペン郊外のハス畑から王宮前まで配達してくれる。
何より「カンボジアで祈りの儀式にハスの花は欠かせないので、ここで商売をしていれば、ひとつも売れないということはない」からだという。
それゆえ、今の職に就いてからは、生活には困らないだけの収入は得られているそうだ。
チャンティーさんは、ハスの花で売っている。朝6時から花が売り切れる夜まで続けて、1日の売り上げは50,000リエル(約12.5ドル)ほど。
手元には20,000リエル(約5ドル)ほど残るという。
一番売れるのは仏日と、日曜日の朝と夕方だそうだ。
チャンティーさんが仕事をするうえで大事にしているのは、 “一期一会の精神”。
同業者も周りにたくさんいる中で、自分から買いたいと思ってもらえるよう、心を込めて通りすがる人に声をかけているという。
「売り手と買い手は、縁があって出会うもの。だから、そのきっかけとなる声かけは重要だと思っていて、大切にしています」
過去のカーロッシーはこちら
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