人は食うために働く。カンボジア人のそんな姿を切り取るニョニョムでおなじみのコーナー
「カーロッシー(食いぶち探し)」。今回は王宮前の祠で蓮の花を売るチャンティーさん。
カーロッシーとは
生活情報誌NyoNyumで長年人気を誇るコーナー「カーロッシー」。人は何のために働くのか。
カンボジアの人々の答えは明快、「食うため」。
彼らは、働くことを「カーロッシー(食いぶち探し)」と呼ぶ。汗と涙を流しながらも、日々淡々と行われるその営みを紹介する。
お客様の好みのドリンクに笑顔を添えて
大小さまざまなカフェが次々にオープンしているプノンペン。街を歩くと、あちらこちらにおしゃれなカフェが目に入る。
一方で、路上で小さなコーヒーの販売店を営む人の数も多く、人気の路上店には人がひっきりなしに訪れている。
コンポンチュナン州出身のペル・スレイモムさん(29)は、プノンペンに上京して3年。路上でコーヒー販売店を営んでいる。
商売を始めてから今の場所を確保するまでの1年くらいは、小さな稼働可能式コーヒーブースを引いて都内各地を転々としていたが、今では定着した場所で常連客も増えてきた。
彼女がこの商売を始めたのは、5歳になる娘を養うため。夫は民間の運送会社で働いていたが、コロナ禍で仕事がなくなり、スレイモムさんのコーヒー販売を手伝っている。
「上京したばかりの頃は韓国系の銀行の掃除人として働いていました。でも、条件もあまり良くなく、カフェなら自力でお金を稼ぐことができると思い、雇用されて働くのをやめてこの商売を始めたんです」
「おいしいコーヒーとドリンクを、安い価格でお客さんに届けることが大事」だと笑顔で語るスレイモムさん。
約3年間こつこつとコーヒー販売を続けてきた結果、スレイモムさんのコーヒーの味がいろいろな人に知られるようになった。
「始めたばかりの頃は、路上を点々と移動していたため、あまり売れませんでした。当時のお客さんのほとんどは、バイクタクシーや、シクロ、トゥクトゥクの運転手たちでした。でも、商売を続けていくうちに、買ってくれる人の中から私のコーヒーが美味しいという評判が上がり、口コミで広がっていったんです。『スレイモムさんのコーヒーをまた味わいたいから探してきたよ』と言ってくれるお客さんもいました」。
コーヒーがよく売れるのは午前中。この日も多くの人がスレイモムさんのコーヒー販売店に集まっていた。今や、トゥクトゥクの運転手や労働者だけでなく、会社の従業員や大学生、周辺の人々が彼女のコーヒーを好んで買いに来てくれるという。
常連客や新規のお客様が自分を探しやすいようにと、1年前に王宮と王立芸術大学の裏側付近の借家の前に販売ブースを置くことに決めた。
おいしいコーヒーとドリンクを作るには、新鮮で良い材料を使うのはもちろんのこと、常連客の味の好みを覚えることも大切だというスレイモムさん。
「コーヒーを作るためには人から教わったマニュアルに縛られるのではなく、積極的にお客さんに『コーヒーの味はどうですか』と聞き、飲むお客さんの味の好みを追及するのが重要だと思うんです。だから、店のコーヒーやドリンクの味は特にこれと決めず、お客さんの好みで味を変えています。お客さんによってすごく甘いものが好きだったり、程良いくらいが好みだったりするので。ミルクの量もそれぞれです。いつもその要望に対応しています」
コロナ前は1日に約300杯のコーヒーやその他ドリンクを販売していたが、市中感染が拡大している今は、売り上げは50%以上減少しているという。
メニューは、カフェドーン(ココナッツ入りコーヒー)、練乳入りアイスコーヒー、アイスココアコーヒー、ライム入りアイス、緑茶やアイスティー、パッションミルクジュース、シロップミルクジュース、塩漬けライム茶など。
その中で最も人気があるのは、アイスコーヒーとライム入りのアイスティーだ。価格は、Sサイズが2,000リエル(約0.5ドル)、Lサイズが4,000リエル(約1ドル)。
この商売は簡単で誰でもできるぶん、お客様には美味しいのはもちろん、衛生面でも安心して飲んでいただけるよう常に心掛けているそう。
将来は、大きなコーヒーショップを持ちたいと夢を語ってくれた。
過去のカーロッシーはこちら
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連載62 :
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