NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、バイヨン中学校で起きたある事件について。
雨降って地固まる
日本の方々からのご支援で、開校早々、サッカーゴールやバレーボールコートなど運動設備も整ったバイヨン中学校でしたが、ある晩、バレーのネットが盗まれるという事件発生!
先生、生徒をはじめ、私たち支援者も残念な気持ちでいっぱいになりましたが、学校側の対応は驚くほど速いものでした。
翌日、校長は生徒たちが通う4つの村の村長を集め、村の住人に注意を促すよう依頼。生徒からは当番制で学校に寝泊まって夜警を行うという申し出が。
まさに「雨降って地固まる」のごとく、先生と生徒と地域が一丸となって学校を守り、良い環境をつくっていこうという機運が高まることとなりました。
とはいえ、校長の一番の悩みは、生徒の学力レベルが驚くほど低いということ。教科書が読めない生徒もいるほどとのことで、カンボジアの平均レベルまで教育の質を上げるための模索が続いています。
土日に補習授業やパソコン授業(電気のない村ですが、ソーラーパネル設備が整いました!)を行うだけでなく、学校を休む生徒がいれば家庭を訪問し、頻繁に父母会を開くなど、まず子供の教育に対する親の意識改革を行っています。
また、情報処理能力にも優れている校長は、生徒の成績などは直ちに数値化・グラフ化して整理し、対応策を検討するなど、常に発展的思考で臨んでいます。
自分の教育者としての今後の人生は、すべてバイヨン中学校に捧げると全力投球している校長。こんな熱血先生がカンボジアにもいらしたのですね!
生活面では厳しい規律を設け、学業面では月ごとの成績を公表するなど、村の子供たちにとってバイヨン中学での生活は決して甘いものではありませんが、校長の熱い思いは生徒たちに十分伝わり、「学校が楽しい、勉強が好き!」と、生き生きと勉強に励んでいます。
このように校長と生徒が中心となり、地域の核となりつつあるバイヨン中学校。今後の成長が楽しみです。
(この記事は2014年6月に発行されたNyoNuym71号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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過去の記事
4:新鮮な出会い
5:村の給食プロジェクト
6:読み書きができない村の若者たち
7:ひょんなことからレストラン経営へ
8:おばあちゃんになっても!?
9:中学校がほしい!
10:みんなで中学校をつくろう!
11:村の中学校が開校した!
12:未来へのバトン
13:農村案内ツアー開始!
14:雨降って地固まる
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