NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、遺跡修復に関する20年の歳月について。
20年の重み
「日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA/JASA)」は、1994年の発足から今年で20年を迎えることとなりました。現在は、カンボジア人専門家7名、修復技術者54名が中心となって、バイヨン寺院外回廊東面の景観整備を行っています。
20年前のカンボジアは、皆が貧しく、政情も不安定な状況でしたが、大学卒業直後から遺跡修復に携わっている専門家たちは、紆余曲折がありながらも、今ではすっかり腰を落ち着けて修復作業に取り組み、着実に成果を上げるようになりました。
そんな彼らは、数年前から、カンボジアの子供たちの教育にも目を向けています。
多くの外国人観光客で賑わいをみせるアンコール遺跡群ですが、実は、カンボジアの子供たちの多くは、アンコール・ワットやバイヨン寺院を一度も訪れたことがありません。カンボジアの学校では、アンコールの歴史や遺跡について学ぶ機会はほとんどなく、遠足や社会見学会といった教育プログラムもないからです。
また、農村部に住む彼らの親の世代は、識字率が低く、歴史や遺跡に関する知識が乏しいうえ、食べていくのがやっとという毎日を送り、遺跡訪問どころではないというのが実情なのです。
そのような中、JST主催の「子供たちのための社会見学会」では、カンボジア人修復専門家が、地域の小学生に、アンコールの歴史や当時の建造技術、そして修復の方法を伝える試みを実践しています。
参加した子供たちは、初めて見る遺跡に驚き、それらを造り上げた自分たちの祖先の偉大さを知って誇らしく感じるのでしょう、皆、興奮しながら遺跡を後にします。
教えられる側から教える側へと成長した専門家たちに20年の歳月の重みを実感するとともに、今、1人でも多くのカンボジアの子供たちに祖先からの遺産の素晴らしさを伝えることが、20年後のカンボジアを形づくることに繋がるのだと感じています。
(この記事は2014年8月に発行されたNyoNuym72号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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5:村の給食プロジェクト
6:読み書きができない村の若者たち
7:ひょんなことからレストラン経営へ
8:おばあちゃんになっても!?
9:中学校がほしい!
10:みんなで中学校をつくろう!
11:村の中学校が開校した!
12:未来へのバトン
13:農村案内ツアー開始!
14:雨降って地固まる
15:20年の重み
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