(日本語) Moi Moi ライフ #17 治水工事をめぐるてんやわんや
(日本語) Moi Moi ライフ #17 治水工事をめぐるてんやわんや
2020.02.01

NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)

シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。

今回は、小出さんの畑で起きた騒動について。

治水工事をめぐるてんやわんや

モイモイ農園には2つの川が流れています。両方の川は、村人がつくった土手を挟んで接している箇所があり、田仕事へ行く農民や牛が行き来したり、子供たちが釣りをしたり、水牛の群れが水浴びをしたりと、のどかな農村風景が楽しめる場所となっていました。

そんな農園に、今年4月、アンコール地域遺跡整備機構の役人がやってきました。

「シェムリァップ市内の雨期の洪水を緩和するため、郊外へと続く川の拡張工事を行うことになった。ひいては、農園内を流れる川幅も広げる計画だ」と。

その翌日には、有無を言わせぬ早さでショベルカーが敷地内に入り、川底と護岸の土を大胆に削り取る作業が始まりました。土手も削られ、2つの川は合流することになりました。

そして数日後。土手があった場所に、さらにコンクリートでせきをつくる計画があるとの情報が入ってきました。土手の代わりにせきを設け、水田へ流す水量を調整する計画のようです。

とはいえ、せきのような巨大なコンクリートの塊が出現したら、せっかくの景観が台無しになってしまう!!

けれども、お上の決定には逆らえません。しかも、その理由がシェムリァップ市内の洪水対策となればなおさらです。仕方がない、と諦めかけたその矢先。同じ役人から、「技術的に無理だとわかったので、少し先の場所に変更となった」との連絡が。

ええっー! 行き当たりばったりで計画を立てているのですか???

こんな風に、先の予測がつかないカンボジアですが、何が起きようとも「災い転じて福となす」精神で乗り越え、楽しく穏やかな日常を過ごしたいものです。

ほどなく、別の場所に変更になったとはいえ、モイモイ農園内にコンクリートの巨大なせきができあがりました。自然のままの景観は失われましたが、ものは考えよう。

その周辺は年中豊富な水が溜まるようになり、豊かな農地に大変身! しかも、自分の敷地内にダムがあるなんて・・・。そうないですよね!

(この記事は2014年12月に発行されたNyoNuym74号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

コラムニスト: 小出 陽子(こいで・ようこ)

一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事

 

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7:ひょんなことからレストラン経営へ
8:おばあちゃんになっても!?
9:中学校がほしい!
10:みんなで中学校をつくろう!
11:村の中学校が開校した!
12:未来へのバトン
13:農村案内ツアー開始!
14:雨降って地固まる
15:20年の重み
16:カンボジア遊農民のキュウリ畑
17:治水工事をめぐるてんやわんや

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