NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、バイヨン中学校の評判と危機について。
教師がいない危機に直面するバイヨン中学校
”アンコールの都の西北”に一昨年創設されたバイヨン中学校には、現在、2学年合わせて300人が通っています。
州の教育関係者によれば、開口早々これだけの人数の生徒が入学するのは、カンボジア農村部の中学校としては前例がないとのこと。地域の子供たちの学校に対する期待の高さがうかがえます。
今年度進級した中学2年生にバイヨン中学校の感想を尋ねたところ、先生の教え方がよく授業がわかり易い、支援者による特別授業のほか、日本語やパソコン授業等があり、様々なことを学べるので立派な大人になれそう、生徒は皆で協力し仲良く生活しているので毎日が楽しい、靴やノートなどの支援物資が届くのでお金がかからない、教室やトイレがきれいで環境がよい、きれいな水が飲める、規則がきちんと守られている等々、生徒たちは校長や支援者の思いをしっかりと受け止め、勉学に励んでいることがわかりました。
進級時に5人の生徒が家の経済的事情で辞めざるを得ませんでしたが、これまで遠くの中学校に通っていた学生や、進学をあきらめて働いていた村の子供たちが次々と転校や入学を希望しています。
支援の輪も広まり、来期初めには全16教室の校舎が中庭を囲んでコの字型に配置される予定で、早くも当初の構想は達成しそうです。
とはいえ、学校自体は深刻な危機に直面しています。5人の専任教師が赴任したものの、1カ月たってもそれ以上の教師が集まらないのです。
校長は、州や市の教育長に教師派遣を掛け合いますが、バイヨン中学校のような農村部の学校には、誰も赴任したがらないとのこと。教師5人で2学年6クラス、全科目を教える日々が続きました。
現在は、交通費支給を条件に暫定的に非常勤の教師を確保していますが、校舎をつくっても教師が派遣されないという、カンボジア農村部の学校運営の難しさを身に染みて感じているところです。
(この記事は2015年2月に発行されたNyoNuym75号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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7:ひょんなことからレストラン経営へ
8:おばあちゃんになっても!?
9:中学校がほしい!
10:みんなで中学校をつくろう!
11:村の中学校が開校した!
12:未来へのバトン
13:農村案内ツアー開始!
14:雨降って地固まる
15:20年の重み
16:カンボジア遊農民のキュウリ畑
17:治水工事をめぐるてんやわんや
18:教師がいない危機に直面するバイヨン中学校
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