NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、学校運営費をねん出する工夫について。
バイヨン中学校の菜園ビジネス
日本では考えられないことかもしれませんが、国から支給される公立学校の運営費が限定的である中、カンボジアで魅力的な学校をつくるには、学校自身が自立に近づくための何らかの手段を持たなければならないと感じています。
そこで、地域の魅力を紹介するツアー(1年前の当コラムで紹介:Moi Moi ライフ13)に引き続き、バイヨン中学校で始めたのが有機野菜栽培です。
まずは日本の活動助成金を申請・受諾して菜園道具を揃え、カンボジア人農業従事者の指導もと、生徒全員のマンパワーで校庭の片隅を防牛柵で囲い、土を耕し、畝をつくり、直射日光をやわらげるための網を被せ、畑をつくりました。
毎日の水やり等野菜の世話は休み時間に当番の生徒が行います。こうして開始2か月後、空芯菜、キュウリ、なす、トマト…と、色・形・大きさとも市場で売られているものと比べても遜色のない新鮮野菜の収穫が始まりました。
これらの野菜は、私がシェムリァップで経営するレストラン「カフェモイモイ」で、これまで市場で購入していた価格ですべて買い取ることにしました。たとえばキュウリの場合、市場の仲買人に購入してもらうとしたら1000リエル/kgにしかなりませんが、カフェモイモイの場合は3000リエル/kgになります。
さらに市内の外国人向けの有機栽培キュウリは約5000リエル/kgで販売されていますので、中間業者を通さずに直接消費者に販売すれば、オーガニックという付加価値もついて、バイヨン中学校だけでなく皆がHappyになれる道が開けると確信しました。
この菜園事業によって学校運営費をねん出できるようになるまでは、まだ時間がかかりそうですが、小さいながらも出来上がりつつある生産-販売-消費サイクルの均衡をうまく保ちながら、またこの試み自体を学校教育の場でも生かしながら、地道に中学校の菜園ビジネスを続けていきたいと思います。
(この記事は2015年4月に発行されたNyoNuym76号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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9:中学校がほしい!
10:みんなで中学校をつくろう!
11:村の中学校が開校した!
12:未来へのバトン
13:農村案内ツアー開始!
14:雨降って地固まる
15:20年の重み
16:カンボジア遊農民のキュウリ畑
17:治水工事をめぐるてんやわんや
18:教師がいない危機に直面するバイヨン中学校
19:バイヨン中学校の菜園ビジネス
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