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Moi Moi ライフ #2 南の国の大きな森での車座会議

NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)

シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。

今回は、小出さんとカンボジアの接点、バイヨンインフォメーションセンターについて。

南の国の大きな森での車座会議

私がカンボジアに関わるきっかけとなった「日本国政府アンコール遺跡救済チーム」の拠点となる施設は、オフィス・研究室の他、専門家の居住棟、多目的スペース等が含まれる複合施設です。

この中で設計の要となったのは、遺跡保全に関する国際会議を実施することが想定され、敷地中心部に配置された多目的スペースでした。この建物を中心に、私はひとつの強いイメージを持って全体の設計を進めることとなりました。

会議を行う場所というと、一般に、冷房を効かせた四角い箱型の部屋を想起されるかもしれませんが、ここはカンボジア人の心の拠り所ともいえるアンコール遺跡群の保存を、技術的な面でリードしていく中心施設。

そして、遺跡修復の学術的調査の過程で得られた、当時のアンコールの人々の思想と知恵、さらに現代の修復技術者たちの活動と思いを、世界に向けて発信する役割をも担っていくことになります。何か求心的な、人を惹き寄せるような力を込める必要があると思いました。

一方、数々の寺院や都市がつくられ繁栄したアンコール時代、その基盤となったのは、豊かな自然資源を内包した “森” でした。そこに人々が集い、知恵と力を結集することによって、あのような壮大で、人為を超えた偉業が創出されたのです。

いつしか、私の中で、そのような “アンコールの森” のイメージが、人々が集まり、そして新たな “何か” を生み出すであろうこの施設のイメージとぴったりと重なり合うようになりました。壁のないオープンな八角形空間、大柱が天空に延び、柱頭部で枝分かれして大きな屋根を支えています。深い森、すべてのものを包み込む木々を想定しました。

360度見渡せる庭には、色とりどりの南国の花が咲き誇っています。蓮池からは涼しい風が…。そのような中で会議が行われるとしたら、南の国の酋長たちが車座になって話し合うイメージとなるでしょうか…。

2002年、施設は完成しました。完成後は、日本とカンボジアの文化交流の場としても活用され、2009 年からは、アンコールの歴史と修復に関する展示施設「バイヨン・インフォメーションセンター」として、毎日、一般公開されています。

このように、多くの人に愛され、年々発展していく施設の姿を見ることは、建設に携わった者としてはこの上ない喜びです。

今後はどのような進化を見せてくれるでしょうか?
皆さんも、シェムリァップに来られる機会があれば、一度、立ち寄ってみてください!

(この記事は2012年6月に発行されたNyoNuym59号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

コラムニスト: 小出 陽子(こいで・ようこ)

一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事

 

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