NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、あまーいあるお菓子に関しての推測について。
お菓子をめぐる歴史ロマン
カンボジアには、米粉を主原料とし、炒った緑豆やバナナやカボチャなどとココナッツミルクを混ぜて作られた昔ながらの生菓子があり、やはり米粉で作られている日本の”ういろう”によく似ています。
朱印船貿易の時代、香木、織物、砂糖などを求めて多くの日本人が東南アジアにわたりましたが、その頃にお菓子の交流もあったのでしょうか・・・。
そんなかねてからの疑問を胸に、先日の帰国の折、小田原で600年続くういろう本店を訪ねました。中国にルーツをもつ小田原・外郎(ういろう)家は、もともと南方の生薬を原料とした漢方薬を製造・販売する薬種業として栄え、明国との外交にも深くかかわっていました。
そして、李氏朝鮮使節団のもてなしの際に、当時、銀と同じ重さで取引されるほど高価で、貴族の栄養剤、気付け薬として仕入れていたサトウキビ(黒糖)を米粉に混ぜて蒸し、甘くもっちりとしたお菓子”ういろう”を創作したそうです。
日本では、砂糖が貴重品だった時代が長く続き、庶民の口に入る甘いお菓子が出回るようになったのは、ずっと後のこと。お菓子をめぐる交流についてはわかりませんでしたが、そんな佐藤の歴史を再確認した訪問でした。
翻ってカンボジア。砂糖ヤシ、サトウキビ、蜜蜂等、甘味原料には事欠かない環境にあります。特にカンボジアの国木・砂糖ヤシの木は、農村部のほとんどの家に植えられ、樹液を煮詰めるかまども容易に手作り可能。
昔から過程で砂糖を作り、自家栽培の米で甘いお菓子を作ることができたわけです。そして、それが今でも庶民のお菓子としてカンボジア全土で作られ、親しまれているのです。
カンボジアの平野部では至る所に生育している砂糖ヤシではありますが、砂糖が貴重な時代や国があったことを振り返ると、アンコール時代には、王朝の勢力拡大にも貢献した貴重な資源の一つだったのかもしれませんね。
そんなお菓子をめぐる歴史にしばし思いを馳せているところです。
(この記事は2015年12月に発行されたNyoNuym80号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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14:雨降って地固まる
15:20年の重み
16:カンボジア遊農民のキュウリ畑
17:治水工事をめぐるてんやわんや
18:教師がいない危機に直面するバイヨン中学校
19:バイヨン中学校の菜園ビジネス
20:1日1000リエルのアンチエイジング体操
21:近くて遠いアンコール遺跡
22:バイヨン中学校の養殖プロジェクト
23:お菓子をめぐる歴史ロマン
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