(日本語) Moi Moi ライフ #36 教師不足解消への道?
(日本語) Moi Moi ライフ #36 教師不足解消への道?
2020.02.01

NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)

シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。

今回は、バイヨン中学校の教師不足の現状と、打開策のアイデアについて。

教師不足解消への道?

つい半年前まで電気も通っていなかったバイヨン中学校ですが、村に立派な電柱が立ち並び、学校まで通電するようになってからの進展は驚くべきものがありました。

まず、支援団体から寄付されたインターネットアンテナの設置によって、ネット通信が可能となりました。
その結果、日本の中学校の教室とバイヨン中学校の教室をスカイプ通信で結び、生徒たちが画面を通してお互いの国の文化や生活について英語で紹介し合うという、同世代交流が実現。

さらに、日本の大学の家政学部の学生によるスカイプ授業も行われ、ミシンを使ってのスカート製作実習が実現しました。

一方、バイヨン中学校の現在の悩みは、当初から続いている教師不足です。
創立5年目の現時点で、3学年10クラス、504人の生徒数に対して、一般教員は11名のみ。
教育省からの教師派遣は毎年2人ほどで、バイヨン中学校の規律になじめずに辞めていった教師もこれまでに2人います。

基本科目でさえ、相変わらず他校の教師の出張授業に頼っていますし、音楽、美術、家庭科といった教科は全く教えられていません。

教師の技量もまちまちで、アンケートによると、教えるべき内容をよく理解せずに教えることもあるようです。

また、文字の読み書きができないなど、小学生レベルの知識が身についていない生徒がいたり、就労のために退学する生徒がいたりと、教師の負担はかなりのものと想像します。

生徒のやる気があっても、校舎が整っても、教える側の教師がいなければ元も子もありません。

カンボジアの公立の中学校だというのに情けない話ですが、教育省からの教師派遣をこれ以上当てにすることはできないとも感じています。

今後は、スカイプ通信のような現代テクノロジーを使って、新たな授業形態を展開することはできないものでしょうか…。
電気が通ったことにより広がる可能性に期待します。

(この記事は2018年2月に発行されたNyoNuym93号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

コラムニスト: 小出 陽子(こいで・ようこ)

一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事

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26:クメールの源流をたどり、スリランカへ
27:初めてのクーラー
28:アンコール・ワットの珍味
29:真夜中のアンコール・ワット
30:進化するバイヨン中学校
31:めざせ、カンボジアらしい運動会!
32:ロムドゥールカンボジア誕生か?
33:〝学泊〞で一味違ったカンボジア体験
34:始業式と卒業式
35:子供向け水環境絵本で学ぼう!
36:教師不足解消への道?

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