NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、カンボジアの算数事情について。
他国事(ひとごと)ながら
昨年末、バイヨン中学校で建設中だったトイレ現場でのこと。小さな現場なので、地元の建設職人チームに仕事を依頼しました。棟梁はとても真面目で、モルタル仕上げなどの腕もなかなか。
これはいけると思っていたのですが、115ミリ間隔で壁にボーダーを付けてほしいと依頼したところ、出来上がったのは150ミリ間隔のボーダー。当初、(図面が理解できない様子だったので)巻尺を当ててチョークで原寸線を描いて指示をしたのですが、それでも間違えたことにやや面喰いました。
気を取り直してもう一度やり直してもらったのですが、2度目も150ミリ間隔で作りはじめたのを見て、流石にこれはまずいと、急遽、別の業者を探し、交替してもらいました。
おそらく彼らは小学校に通ったことがない、もしくは低学年で退学していて、ミリの単位を知らなかったのでは?と思ったのでした。
その直後。教師が見つからないバイヨン中学校新1年生に、数学を教えることになりました。
まずは算数の理解度を計るために簡単な計算問題を与えたのですが、分数、少数の計算ができる生徒は全体の1割にも満たないことが判明。例えば、0.5+3は、8や0.8と答える生徒が9割以上もいたのです。
以前から、「小学校レベルの計算やクメール語ができない生徒がいて、教える先生方が苦労している」とは聞いていましたが、ここまで酷い状況だとは思ってもいませんでした。算数の土台がなければ中学校3年間の数学は全く理解できないはず。
さらに、そのまま高校に進学している生徒もいるのでは?と思い、市内の高校に通う高校生に同じ計算問題を解いてもらったところ、なんとその学生も0.5+3=0.8と答えたのでした。
公立学校に教師が派遣されず、教育に対する親の理解も乏しいカンボジア農村部は、今後どうなるのでしょう…?
他国事(ひとごと)ながら、老婆心ながら、心配になった年末の1か月でした。
(この記事は2020年2月に発行されたNyoNuym105号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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39:#cafemoimoi で繋がる輪
40:ノンちゃんはトリリンガル
41:粋なお福分け
42:魅惑のカンボジア発酵魚料理
43:NyoNyumとカンボジアと私
44:村の中学生たちの日常
45:中学校退学者のその後
46:バイヨン高校がほしい!
47:バイヨン高校、ついに開校!
48:他国事(ひとごと)ながら
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