(日本語) Moi Moi ライフ #6 読み書きができない村の若者たち
(日本語) Moi Moi ライフ #6 読み書きができない村の若者たち
2020.02.01

NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)

シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。

今回は、村の若者が生きる世界について。

読み書きができない村の若者たち

アンコール・クラウ村で驚いたのは、子供たちの発育状況だけではありません。他にも”小学校在学中の退学者数の多さ”などがありました。

村の小学校の黒板に書かれた数年分の生徒数リストをみると、毎年、1年生のうちに約四分の一の生徒が、6年生までに三分の二以上の生徒が学校に来なくなることがわかるのです。

小学校1年生にもなれば、村の子供たちは各家庭の重要な労働力。田植えや稲刈りの時期には学校を休んで手伝いに駆り出され、また、放牧牛の世話や弟妹の面倒をみるために学校に行くことのできない子供も多いのです。

深刻なのは、小学校1年生で退学した場合、母国語の読み書きができないまま大人になることです。そして現在、村には字が書けない若者がたくさんいることもわかりました。

例えば、カフェ・モイモイスタッフやクロマーの織子として私の身近で仕事をしている村出身の20歳前後の女性たち。最終学歴を聞いて見たところ、なんとその半数が、”小学校1年生”と答えたのでした!読み書きの自己評価は「全くできない」または「自信がない」。

今、同時代を生き、ともに仕事をしている若者が、書物を一切読むことなく人生を送る・・・。その世界を想像するだけで、深い闇の中へ引きずり込まれるような思いがしました。

と同時に、町に暮らし、日々の仕事に追われている間に、周りに映る世界の表面を眺めていただけの自分にも気付いたのでした

(この記事は2013年2月に発行されたNyoNuym63号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

コラムニスト: 小出 陽子(こいで・ようこ)

一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事

 

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1:マンゴーの季節
2:南の国の大きな森での車座会議
3:遺跡修復プロフェッショナル一家
4:新鮮な出会い
5:村の給食プロジェクト
6:読み書きができない村の若者たち

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