NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味。恵み豊かなカンボジア
でのスローライフをお届けします)
シェムリアップで暮らす小出陽子さん。NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、「公立学校の教師不足、次なる一手へ」について。
公立学校の教師不足、次なる一手へ
2022年3月現在、バイヨン高校・附属中学校は、生徒数964名(コロナ禍で30名ほど退学)、クラス数は20クラスとなりました。しかし、教師数は相変わらず13人のまま。特に理数系の教師が全く足らず、時間割さえまともに組むことができません。
教師不足の主な理由は、教師自身が自宅の近くか都市部の学校で教えたいと希望されるからです。都市部では副業として塾の講師ができますし、保護者も教育熱心で、学校や教師に補助金などが集まりやすく、学校運営も比較的スムーズです。都市部では定員の2倍以上の教師が在籍している学校もあり、農村部との格差はますます開くばかりです。現在バイヨン高校・附属中学校に在籍している13名の教師のうち、数名の教師はすでに教育局に転勤願いを届けているため、今後も引き続き教師不足は続くことになります。
一方、生徒数は年々増加しています。近年、小学校での中退は減る傾向にあり(これは大変喜ばしいことですが)、中学進学率が高くなるだけでなく、バイヨン高校・附属中学校の評判を聞きつけて、他学区から入学を希望する生徒も増えているからです。来年は全校生徒約1100人、22クラスになるだろうと予測しています。
さて、この事態をどう打開していくか…。教師がいなくても授業ができる体制を早急に整えるしか手はありません。そこで、支援者に呼び掛けて大型TVモニターとパソコンを全教室分揃え、e-learning 授業ができる体制を整えているところです。幸い、コロナ禍により都市部ではオンライン学習が普及したこともあり、教え方の上手な教師による授業動画がネット配信されるようになりました。生徒にとっては、教師に直接教えてもらった方が理解できると戸惑いの声も聞かれますが、背に腹は代えられません。e-learning でいかに効果的な学習を行えるか、しばらくは模索が続きそうです。
(この記事は2022年4月に発行されたNyoNuym118号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
1992年早稲田大学大学院卒。一級建築士。2000年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のため、カンボジアに赴任。2005年~ 2020年、シェムリアップにてレストランCafe Moi Moi を経営。2005年JST(NGO:アンコール人材養成支援機構)を設立し、農村地域の支援活動を始める。2013年“アンコールの都の西北” に公立のバイヨン中学校を創設。2019年には高校も併設され、現在、全校生徒1,000人の学校運営を行っている。
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41:粋なお福分け
42:魅惑のカンボジア発酵魚料理
43:NyoNyumとカンボジアと私
44:村の中学生たちの日常
45:中学校退学者のその後
46:バイヨン高校がほしい!
47:バイヨン高校、ついに開校!
48:他国事(ひとごと)ながら
49:”パプリカ“歌って英語授業!
50:”サイクリングブーム
51:将来の夢はYouTuber!
52:ナーガ・シンハ彫像修復プロジ ェクト終了!
53:Cafe Moi Moi コロナ禍で一時休業へ
54:バイヨン中高校先生方のコロナ禍副業
55:話し出したら止まらない“将来の夢!”
56:Moi Moi Farmでマンゴー狩り!
57:"一家に一農園"ブーム到来?
58:『インドラネット』
59:日本にもクメール寺院が!
60:コロナ禍乗り越え、 自立したスタッフたち
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