NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
（「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味。恵み豊かなカンボジア
でのスローライフをお届けします）

シェムリアップで暮らす小出陽子さん。NGO「アンコール人材養成支援機構：JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。

今回は、「バイヨン高校初の卒業生の快挙！」です。

バイヨン高校初の卒業生の快挙！

昨年2022年12月、バイヨン高校・附属中学校から初めての卒業生が巣立ちました。カンボジアでは高校卒業時に全国一斉の高校卒業試験があり、その合否によって卒業の可否が決定されます。それだけでなく、大学進学や奨学金獲得、学校自体の評価などにも影響するとあって、先生方は初めての卒業生に期待を託し、コ ロナによる２年近くの学校閉鎖中もできるかぎりの学習機会を提供していました。学校再開後は高校３年生中心の時間割を組み、補習授業も始めました。

こうして迎えた卒業試験。受験生77名に対して、バイヨン高校の合格率は 93.5％と、全国平均の71％をはるかに上回る好成績となりました。しかも、都市部の高校の優秀な学生でも取るのが難しいと言われている“ランクA”の生徒も一人輩出し、先生方も飛び上がって喜んでいました。それにしても、生徒数1000人に対して教師が14名しかおらず、授業時間も大幅に削らなくてはならない農村部の学校です。どの家庭も経済的余裕はなく、町の学習塾に通える生徒は一人としていません。そのような環境下での予想だにしなか っ た嬉しい結果でした。合格した生徒の家族だけでなく、学校や地域も喜びと感動の渦に包まれました。

その後、プノンペン大学、国立経営大学など、授業料無償の奨学金を得ての大学合格者も決まっていきました。保護者世代の識字率が２割に満たないこの地域での初の国立大学生誕生です！当初は、都会へ行くのは怖い、村から離れたくないと、進学を拒否する生徒も何人かいましたが、校長が全力で説得し、この3月から大学に通い始めています。

先輩たちの快挙を目の当たりにして、在校生はさらに勉学に励むようになりました。子供＝労働力としか考えていなかった親の意識も少しずつ変わってきています。今後、彼らバイヨン高校卒業生たちが村の将来を少しずつ変えていくことでしょう。どんな未来が展開するか、楽しみです！

（この記事は2023年4月に発行されたNyoNuym124号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。）

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