NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味。恵み豊かなカンボジア
でのスローライフをお届けします)
シェムリアップで暮らす小出陽子さん。NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、「ニョニュムとともに、転機の年に」です。
ニョニュムとともに、転機の年に
シェムリァ ップやカンボジア農村での生活を紹介できたらと始めた「シェムリァ ップMoi Moi ライフ」連載も今回で最終回です。書き始めた2012年は、シェムリァ ップにバイヨン中学校を創設しようと土地を確保して校舎建設を始めた年でしたので、70号にわたる連載の大部分はバイヨン中学校、のちにバイヨン高校となるカンボジアの学校運営の悲喜こもごもとなりました。そんなバイヨン高校・附属中学校も、創立10周年を迎え、生徒数はなんと1000人以上!昨年末卒業した初の高校3年生の中には、プノンペンの王立大学をはじめとする国内の大学に進学できた生徒も数名いて、また、寄付に頼らない学校運営の仕組みが少しずつ軌道に乗るなど、教師中心に自力継続していく道筋が見えてくるようになってきました。ここまでくれば一 安心(となるでしょうか?なればいいのですが…) 。
そして連載最終回の今、私は日本でこのエ ッセイを書いています。というのは、50年以上家族が住んだ日本の実家を解体することになり、大量のモノや家具を処分している最中なのです。実家はもうすぐなくなってしまいますが、故郷の山々と富士山、そして雄大な川の流れを日々感じられる地に、日本での新たな拠点も構えました。今後は、日本とカンボジア 、半々の生活になります。振り返れば私のカンボジア生活もすでに四半世紀を迎えようとしていて、今年は転機の年なのかもしれません。
実家の解体にあたっては、近くでカンボジアのお寺(カンボジア憩いの館)を作っている知人が、お寺で使えそうなものはすべて引き取りたいと、週末、何人かの檀家ボランテ ィアとやっ てきては、家具や食器、照明器具や家電、室内扉などを運んでいきました。最後にはなんと、すべての窓のアルミサッシ ュと玄関ドアを枠ごと外していました。家具だけでなく建具までもがカンボジアのお寺で再利用されるなんて、なんと素敵なことでしょう!さらに、作業をしているカンボジアの方々からは、「お寺に寄贈できてたくさんの功徳が積めますね。とても羨ましいです」とまで言われました。ああ、カンボジア人はどこにいてもカンボジア人ですね!ニョニュム卒業のタイミングと重なった私の〝転機〞のとき、日本にいてもカンボジアを感じてほっこりできる新たな場所と人々に出会うことができました。
今後、デジタル媒体に一 本化される新しいニョニュムは、きっ と今まで以上に世界のどこにいてもカンボジアを感じられる場となることでしょう。市井のカンボジア人の息遣いが感じられる新生ニョニ ュ ムを今後も楽しみにしています。
(この記事は2023年10月に発行されたNyoNuym127号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
1992年早稲田大学大学院卒。一級建築士。2000年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のため、カンボジアに赴任。2005年~ 2020年、シェムリアップにてレストランCafe Moi Moi を経営。2005年JST(NGO:アンコール人材養成支援機構)を設立し、農村地域の支援活動を始める。2013年“アンコールの都の西北” に公立のバイヨン中学校を創設。2019年には高校も併設され、現在、全校生徒1,000 人の学校運営を行っている。
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38:4人目の勤続10年スタッフ
39:#cafemoimoi で繋がる輪
40:ノンちゃんはトリリンガル
41:粋なお福分け
42:魅惑のカンボジア発酵魚料理
43:NyoNyumとカンボジアと私
44:村の中学生たちの日常
45:中学校退学者のその後
46:バイヨン高校がほしい!
47:バイヨン高校、ついに開校!
48:他国事(ひとごと)ながら
49:”パプリカ“歌って英語授業!
50:”サイクリングブーム
51:将来の夢はYouTuber!
52:ナーガ・シンハ彫像修復プロジ ェクト終了!
53:Cafe Moi Moi コロナ禍で一時休業へ
54:バイヨン中高校先生方のコロナ禍副業
55:話し出したら止まらない“将来の夢!”
56:Moi Moi Farmでマンゴー狩り!
57:"一家に一農園"ブーム到来?
58:『インドラネット』
59:日本にもクメール寺院が!
60:コロナ禍乗り越え、 自立したスタッフたち
61:公立学校の教師不足、次なる一手へ
62:教師の頑張りに感謝!
63:政治はまつりごと、選挙は祭りなり
64:学校閉鎖中の生徒たちの学習はいかに?
65:“これまで” と“これから”
66:カンボジア国王がいらっしゃる!?
67:バイヨン高校初の卒業生の快挙!
68:ベトナムのクメールクロムを訪ねて
69:クメールの発酵食文化を世界に!
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