NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、オーナーを務めるカフェモイモイのスタッフについて。
おばあちゃんになっても!?
カンボジア人自らが主体となって働けるレストランを目指し、2005年にオープンした「カフェモイモイ」。しかし最初の5年間はハラハラドキドキの連続でした。豚・鳥インフルエンザ等の流行が報じられるたびに、アンコールの日本人観光客が激減することの繰り返し。
開業間もないこともあり、不安定な日々を送っていました。そして、極めつけは2008年のリーマンショック。あのときは、シェムリァップ中の観光業界で一時休業や人員削減が相次ぎ、中には閉店に追い込まれた店もありました。
弊店でも、その苦しい時期をスタッフ全員で耐え忍んだことを思い出します。まさに”大海で翻弄される小舟”状態。しかし、それら大波小波を乗り越えるたびに、スタッフは逞しくなり、店の盤石化につながっていきました。何よりも感心するのは、若い彼女たちの責任感と体力。
例えば観光シーズンには、朝3時の早朝から厨房に立って弁当をつくり、夜9時の閉店時間まで働く日々も続くのですが、チーフが取り組んだローテーションをもとに、皆一丸となって協力しながら、店を切り盛りしているのです。
彼女たちが真摯に仕事に向かう理由はいろいろありますが、ひとつには、若いながらもそれぞれの家族を背負っているということがあると思います。中には、親と兄弟姉妹8人を、1人で養っているスタッフもいます。
また、本人は小学1年生で退学して読み書きができないのですが、現在、弟は高校に通っているというケースもあります。このように、モイモイスタッフにたくさんの家族が頼っているのです。
こう考えると、オーナーである私もいい加減なことはできませんね。店を立ち上げたからには、如何なる荒波が押し寄せて来ようとも乗り越えていかなければ、と思うのです。
そして、「おばあちゃんになっても働きたい!」と、スタッフが生き生きと働き続けられる場でもありたいと思います。
(この記事は2013年6月に発行されたNyoNuym65号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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過去の記事
1:マンゴーの季節
2:南の国の大きな森での車座会議
3:遺跡修復プロフェッショナル一家
4:新鮮な出会い
5:村の給食プロジェクト
6:読み書きができない村の若者たち
7:ひょんなことからレストラン経営へ
8:おばあちゃんになっても!?
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