NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味)
シェムリァップで暮らす小出陽子さん。自身が運営するカフェレストラン「Cafe Moi Moi」での発見や、NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、中学校設立決定までの葛藤について。
中学校がほしい!
思い返せばそれは2010年、アンコール・クラウ小学校に新校舎2教室を増設した時のことでした。生徒や村民に感想を求めたところ、「次は村に中学校をつくってほしい!」という声が多数寄せられました。
調べてみると、アンコール・クラウ村を含めた周辺の5つの村には中学校がなく、卒業生は8キロ以上離れたシェムリアップ市内の中学校に通っていることが分かりました。
しかも、自転車が無ければ通えず、雨季には通学が困難になることも分かりました。
さらに、村の子供たちは家庭の貴重な労働力。田仕事、牛飼い、薪拾い、遺跡での物品販売、弟妹のお守りなどを任されるため、小学校中退者が非常に多く、中学進学率にいたっては村全体の子供の数に対して1割以下という現実もみえてきました。
カンボジアの未来のためには農村地域の教育状況を改善しなければならない、と常々考えていた私たちは、さっそく中学校建設用地を探し始めました。
しかし、適切な土地は見つかりません。そしてほどなく、私自身の所有地3ヘクタールを国に寄付して中学校建設を実行するかという決断を迫られることになります。
迷いがなかったといえば嘘になりますが、3学年で1200人以上いるはずの5つの村の子供たち全員が通える中学校を創設することが、最も有意義な土地の使い方だと判断しました。
校舎建設費の大口寄付者が現れたことも決断を後押ししました。まだまだ資金は足りませんが、こうなったら実現に向けて前進するのみ。こうして今年4月、中学校校舎の建設工事が始まったのです。
(この記事は2013年8月に発行されたNyoNuym66号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
一級建築士 ・ レストランオーナー
2000 年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のためカンボジアに赴任。2005 年シェムリァップにレストランカフェ「Cafe Moi Moi」 をオープンする。同年 JST(NGO;アンコール人材養成支援機構)を設立に携わり農村地域の支援活動を始める。現在は、バイヨン中学校、高校の運営も行っている。
JSTホームページ Cafe Moi Moi 紹介記事
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過去の記事
1:マンゴーの季節
2:南の国の大きな森での車座会議
3:遺跡修復プロフェッショナル一家
4:新鮮な出会い
5:村の給食プロジェクト
6:読み書きができない村の若者たち
7:ひょんなことからレストラン経営へ
8:おばあちゃんになっても!?
9:中学校がほしい!
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