(日本語) 【北九州市・カンボジア協力20周年記念特別企画】③日本・ カンボジア水道フォーラムが開催
(日本語) 【北九州市・カンボジア協力20周年記念特別企画】③日本・ カンボジア水道フォーラムが開催
2020.01.13

北九州市とカンボジアが一丸となって復興・開発に取り組んできた水道事業。

最初の記事では長い内戦が終結した1990年代のプノンペンにおける水の状況と、カンボジアの水道マンたちの「きれいな水をみんなに届けたい」という熱い思いに感動し、北九州市が動き出した様子を紹介しました。

②では北九州市が具体的に何をしてきたのかを紹介しました。

3回目となる今回は1999 年に北九州市上下水道局が第1 号の専門家を派遣してから2019年で20 周年。これを記念して昨年11 月に、北九州で大規模な記念行事が行われました。弊社代表・山崎幸恵が通訳者として式典に参加しつつ、これまで関わった方々の声を集めてきました!

 

カンボジア水道界の錚々たる顔ぶれが北九州市に集結!


1999 年以来、のべ約130人の北九州市上下水道局職員がカンボジアに派遣され、カンボジアからのべ約90 人が北九州市で研修を受けてきた。この長い人的交流は、簡単に成しえるものではない。日本の地方自治体として、現地に根を張った息の長い取り組みをしているのは稀といっても過言ではないだろう。

このカンボジアでの協力20 周年を祝うために、2019 年11月28日に日本・カンボジア水道フォーラムが開催された。カンボジアからは工業手工芸省のチャム・プラシッド上級大臣、ウム・ソター工業手工芸省長官、シム・シターPPWSA 総裁など、カンボジア水道事業のトップリーダーが参加し、北九州市の北橋健治市長、村上幸一北九州市議会議長、有田仁志・株式会社北九州ウォーターサービス代表取締役社長らがカンボジア訪日団を迎えた。

 

フォーラムの冒頭で北橋市長は「北九州市は昨年、経済協力開発機構(OECD) から『SDGs 推進に向けた世界のモデル都市』にアジアで初めて選定され、市を挙げてSDGsの推進に力を入れている。2025年までに都市部ですべての住民が安全な水にアクセスできるようになるというカンボジア政府の目標達成のために連携していきたい」と述べた。

一方、チャム・プラシッド大臣は、1999 年の専門家派遣以来、北九州市の活動がプノンペンのみならず地方都市で大きな成果を導いたことに感謝を述べ、今後も北九州市、厚生労働省、外務省、JICA のみならず、民間企業の協力を求めたいと、強いメッセージを発した。フォーラムには200 人以上の水道事業機関・団体・企業関係者や学生らが参加し、カンボジアでの水ビジネスに大きな関心を寄せていた。

 


日本・カンボジア水道フォーラム及び市内研究施設の視察の様子。このほか、カンボジア訪日団は滞在期間中に市内の水道施設の視察、企業を訪問。日本の高い技術やノウハウをカンボジアに積極的に導入し、自国の水道セクターの更なる発展をもたらしたいとの大きな期待を寄せた。

 

 

北九州市とともに、水の道を20年。「友情」こそが原動力

長年にわたり北九州市とともにカンボジアの水道事業に取り組んできたアェク・ソンチャン前工業手工芸省長官・前PPWSA総裁が、長く続いた協力関係の神髄を語ってくださいました。

アェク・ソンチャン H.E. EK Sonnchan首相顧問/前工業手工芸省長官・前PPWSA 総裁

1999 年に当時PPWSA に派遣されていた久保田氏から誘いを受けて、北九州の地を初めて訪れました。その時、当時部長だった森一政氏(のちの北九州市上下水道局長)とカンボジアの水道セクターの復興について語り合いました。この「小さな出会い」が、当時思いもよらなかった協力事業の始まり。

それ以来、木山、石井、川嵜、廣渡という歴代の長期専門家とともに、あらゆる角度から直面する問題に取り組んできました。「成功の要因」をよく聞かれますが、PPWSA 側の自助努力と責任の精神に加え、北九州市上下水道局の皆さんとともに利他の精神で取り組んできたこと。それが大きな要因であったと、この歴史の生き証人であり、実際に昼夜ともに手を取り合い、苦楽を共にしてきた私は評価しています。この世は諸行無常です。しかし、私と北九州市の皆さんの友情は変わることなく、さらに深まり、その意味はますます大きくなっています。

 

スヴァイリエン州での夜間漏水調査の現場にて(中央)。北九州市から派遣された廣渡博さん(左から2 人目)、カンボジアの水道局のスタッフたちとともに

 

 

水道の仲間たちからのメッセージ

20 年を共に歩んできた北九州市とカンボジアの水道マンたち。時にぶつかり、時に理解できず、時に共に涙し、時に肩を抱き合った「水道の仲間たち」からメッセージが届きました!

上田哲也さん
私が派遣されたのは、2000 年5 月から2001 年2 月の9 カ月間で、北九州市から2 人目の派遣でした。当時は、日本人の数も多くなかったと思いますが、日本食の店も少なく食事に苦労した思い出があります。ニョニュムもまだ創刊されていなかったと記憶しています。2014 年に13 年ぶりに派遣されたのですが、日本食店も多く、治安も改善されているようで隔世の感を禁じえませんでした。またその際、13 年ぶりに再会したPPWSA のスタッフが私のことを覚えていてくれ、非常に嬉しい気持ちになったのを覚えています。海外生活が初めての私が9 カ月、何とか頑張れたのも、当時のPPWSA のスタッフがサポートしてくれたおかげだと思っています。これからも、北九州市とカンボジアの友好関係が続いていくことをお祈りいたします。

 

矢山将志さん
私がカンボジアに初めて訪れたのが2009 年で、それから早10 年、現在は、妻子とともにカンボジアに移り住み、長期専門家として仕事をしています。次の20 年に繋いでいけるように頑張ります!!

 

宮下義幸さん
人生初の海外が、水道の維持管理指導の仕事で、場所はカンボジアのカンポット。何もかもが初めての体験ではありましたが、それほど戸惑うこともなく馴染めて、大変良い経験となりました。

 

平田健二朗さん
カンボジアでの3 年間で感じたことは、この国の人たちは前向きで、純粋で、真面目であるというのが率直な感想
です。ただし、素直過ぎることもある気がしますが・・・(汗)。

 

榮修一さん
通算半年間でしたが、公私ともにカンボジアを満喫させていただきました。仕事面では私の英語力のなさで苦労しましたが、少しでもお役に立てたのなら大変嬉しいです。毎朝飲んでた屋台の練乳たっぷりコーヒーをときどき無性に飲みたくなります。

 

佐藤裕一郎さん
The best way to find out if you can trust somebody is to trust them.

 

加賀田勝敏さん
人材育成プロジェクトのフェーズ2 で指導した、月2 回の管網給水栓残塩測定と塩素注入制御が、フェーズ2 終了後も地方水道局のスタッフによって継続され、安全な水の供給に努めている姿を見た時非常にうれしく思いました。

 

西田崇具さん
3 カ月の間に8 都市を巡り、拙い知識・語学力でご迷惑をおかけしましたが、計器の修理や夜間の漏水調査等を現地の方と実施できたことは良い思い出です。様々な人が関わり、20 年という長きにわたって築いた良好な関係を、今後も継続していただきたいと思います。

 

カンボジア水道マンからのメッセージ!

北九州での研修時のひとコマ。充実した研修の後はみんなでカンパイ!

MIH技術・プロジェクト事業部部長/Mr. SRENG Sokvungさん
20 周年にあたり長年の協力に心から感謝の意を表します。水事業に携わる私にとって北九州は“希望の地”。今後も北九州がカンボジアと日本をつなぐかけ橋であり続けることを願っています。

メッセージを寄せてくれたSokvungさん(中央)

 

 

20年の歩み 1999-2019

1999-2002 ●個別専門家派遣

2001 ●JICA 小規模開発パートナー事業(現 JICA 草の根技術協力事業)
北九州市所有のテレメータ31 基を供与して配水監視システムを構築

2003-2006 ●JICA 水道事業人材育成プロジェクト(フェーズ1 )
無収水量率の大幅な低減、2005 年飲用可能宣言

2007-2012 ●JICA 水道事業人材育成プロジェクト(フェーズ2 )
対象8 都市にて安全かつ安定的な水供給が可能に
左:管路管理について指導する竹田大悟さん(2009年)
右:水質分析の指導を行なう松本秀治さん(2010年)

2011  北九州市長が「友好勲章 大十字章」受勲、水道局職員9 名が「友好勲章 騎士章」受勲
北九州市長と、技術協力に従事した同市水道局職員9 名にカンボジア政府より勲章が授与された

2013-2018 ●JICA 水道事業人材育成プロジェクト(フェーズ3
開始当初8 都市中7 都市が赤字であったが、2015 年決算では8 都市すべてが単年度黒字化。
水道法制定に向けた支援など

左:料金徴収について指導する金子直哉さん(2013年)
右:施設更新計画の指導を行う深川拓哉さん(2015年)

2014  水道局職員2 名が「モニサラポン勲章」受勲
バッタンバンでの協力に対し、石井秀雄さん(左)と木山聡さん(右)に勲章が授与された

2018 ~ ●JICA 水道行政管理能力向上プロジェクト(~ 2022 年7 月まで)
工業手工芸省水道総局のガバナンス強化

 

水ビジネスの展開

2010
● 官民連携組織「北九州市海外水ビジネス推進協議会(KOWBA)」設立

2011
● シェムリァップ市浄水場建設基本設計補完業務を受注
● 主要9 都市の水道整備基本計画策定に係る覚書締結(鉱工業エネルギー省、北九州市)

2012
●モンドルキリ州センモノロム市上水道整備事業を受注
● カンポット/ ケップのPPP(官民連携) 基礎調査を受注
● JICA 無償;コンポンチャム/ バッタンバン上水道拡張整備計画準備調査を受注

2013
● プノンペン市におけるJCM(二国間クレジット制度)案件形成支援事業を受注
● JICA 無償;コンポンチャム/ バッタンバン上水道拡張計画を受注

2014
● JICA 無償;カンポット/ シアヌークビル地方上水道拡張整備計画準備調査を受注

2015
● JICA 無償;カンポット上水道拡張計画を受注
● JICA 円借款;シェムリァップ市水道拡張事業・詳細設計業務を受注

2016
● カンボジアの水道事業の発展・普及に関する覚書を締結(工業手工芸省、北九州市、KOWBA)

2017
● JICA 無償;プルサット/ スバイリエン上水道拡張整備計画準備調査を受注

 

④へつづく

 

【北九州市・カンボジア協力20周年記念特別企画④】未来へ。北九州市の新たな挑戦

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