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NyoNyum107号特集:②教員として、手話通訳者として活躍するラオ・ソケターさん

最新号NyoNyum107号の特集は、「補い合うことの尊さ ~みんなの笑顔が溢れる社会を目指して~」と題して、カンボジアで手話の世界で奮闘している方々を取材しました。

新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、カンボジアでも連日ニュースでもちきりとなりました。

テレビやSNSで日々目にする政府の会見やニュースの中で、目に留まるのが 「手話通訳者」。

彼らは、耳から情報にアクセスできない人へ情報を届ける重要な役割を持っています。

いったいどんな人がそれを担っているんだろう?

そんな疑問から、 今回ニョニュムではカンボジアの手話の世界と手話通訳者の活躍、そして聴覚障がい者を中心にカンボジア社会でどのようなサポート体制があるのかを探ってみました。

今回は教員として、手話通訳者として活躍するラオ・ソケターさんを紹介します。

 

障がいを持つ人たちを支える人・社会・国

カンボジアで聴覚に障がいを持つ人は約50万人いると言われており、さらにその中で重度の聴覚・発話障がい者の数は約5万人だといいます(クルーサートマイ統計より)。

カ ンボジア政府と国際NGOは、視覚や聴覚、発話に障がいを持つ人たちが教育や情報を平等に受けることのできる権利を守るため、また日常生活や職場などでコミュニケーション がとれるように、障がい者の教育環境を向上させるさまざまな活動を行っています。

 

教員として、手話通訳者として活躍するラオ・ソケターさん

子供に手話を教えるソケターさん

カンボジアの国営テレビ局(TVK)がニュース番組で手話通訳を取り入れたのは2004年だった。

2008年になると民間テレビ 局のBTVも手話通訳付きのニュース番組を開始。

その頃、手話通訳者を採用するテレビ局は数局しかなかったが、2018年頃か ら政府の後押しにより、テレビ番組での手話通訳の需要が一気に高まったという。

ラオ・ソケターさん(45歳)はプノンペン出身。元々は高校教師だったが、クルーサートマイの教師として転職。

2004 年に手話のテレビ放送が始まった当時、上司からやってみ ないかと打診されたことがきっかけで手話の勉強に関心を持ち、徐々に手話通訳の仕事に関わるようになっていった。

2004年にクルーサートマイの中に手話委員会が発足。

彼女は教師として、また手話通訳者として仕事をする傍ら、こ の委員会のメンバーに任命された。

2010年に同委員会はカンボジアの国家手話委員会となるが、ソケターさんは今も委員会のメンバーの1人としてカンボジアの手話表記の研究や教材開発に関わっている。

現在カンボジアで活躍する手話通訳者はソケターさんの グループに5人いるという。

連日、さまざまなテレビ局からの 依頼を受けて、番組での通訳に走り回っている。

ソケターさんは、「手話通訳者になるために、ゼロから手話の勉強をし ました。学校にいる障がいを持つ子どもたちやスタッフが私の先生でした。今でも新しい言葉や概念がどんどん生まれて いるので、勉強が終わることはありません」と語る。

ニュース番組用の手話撮影の様子

 

手話通訳者として困っているのは、抽象的な表現をするときだという。

「手話の世界では、目で見てわかるような実態 あるものを表現するのは簡単ですが、概念のような抽象的なことを伝えるのは本当に難しいです。背景含め一から説明する必要があり、言葉によっては説明に苦しむものもあります」とソケターさん。

一方で、学校での教育と手話表記の研究、テレビ等での手話通訳と日々大忙しのソケターさんは、今の自分の仕事にやりがいを感じているという。

「政府をはじめ、カンボジア の社会からも聴覚障がい者の存在が広く認知され、彼らへ のサポートが必要だという認識が徐々に高まっています。私は今の仕事を通じて、社会と国に情報を発信する一助を担っ ていると自負しています。そして何よりも、聴覚障がい者のためになる仕事に誇りを持っています」

現在は、テレビ局でのニュース番組のみならず、新型コロ ナウイルス感染症の影響もあり、オンライン教育の中で手話 を取り入れる活動が始まったという。

テレビを見た視聴者からも、街を歩いていると手話通訳者でしょう、と声を掛けられることもあるそうだ。

「自分が表に出て手話をすることによって、障がい者への偏見も少し軽減されるのではないかと 思うんです」とソケターさん。

「聴覚に障がいを持つ児童の親御さんには、どうか失望せずに子どもを学校に入れてほしいです。現在、聴覚に障がいを持つ子どもたちは一般の児童と同じ教育が受けられます。安心して子どもたちを後押しして、高等教育まで受けさせてあげてほしい」

教えた生徒の中には、大学に進学した人も何人かいると いう。

一方で、社会に出て働く卒業生も出てきている。

「聴覚障がいを持つ人は、健常者と同じ能力があります。きちんとやるべきことを教えてあげれば、彼らはきちんと仕事に励みます。雇用者の中からは、『仕事に対する姿勢が良く、勤勉なのでもっと採用したい』という声も上がっているんですよ」。

ソケターさんは優しい笑顔でそう語った。

 

つづく

 

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