最新号NyoNyum107号の特集は、「補い合うことの尊さ ~みんなの笑顔が溢れる社会を目指して~」と題して、カンボジアで手話の世界で奮闘している方々を取材しました。
新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、カンボジアでも連日ニュースでもちきりとなりました。
テレビやSNSで日々目にする政府の会見やニュースの中で、目に留まるのが 「手話通訳者」。
彼らは、耳から情報にアクセスできない人へ情報を届ける重要な役割を持っています。
いったいどんな人がそれを担っているんだろう?
そんな疑問から、 今回ニョニュムではカンボジアの手話の世界と手話通訳者の活躍、そして聴覚障がい者を中心にカンボジア社会でどのようなサポート体制があるのかを探ってみました。
WEB版では全5回で紹介したいと思います。
今回は言語学として手話表記の研究に取り組むNGOを紹介します。
障がいを持つ人たちを支える人・社会・国
カンボジアで聴覚に障がいを持つ人は約50万人いると言われており、さらにその中で重度の聴覚・発話障がい者の数は約5万人だといいます(クルーサートマイ統計より)。
カ ンボジア政府と国際NGOは、視覚や聴覚、発話に障がいを持つ人たちが教育や情報を平等に受けることのできる権利を守るため、また日常生活や職場などでコミュニケーション がとれるように、障がい者の教育環境を向上させるさまざまな活動を行っています。
言語学として手話表記の研究に取り組むNGO
「聴覚障がい者開発プログラム(Deaf Development Programme:DDP)」は、カンボジアで最も古い、聴覚の障がいを持つ成人(これまで教育を受けられなかった人たち)へ教育支援を行うNGOだ。
このNGOは1997にフィンラ ンドやオーストラリア、日本などからの支援で設立され、これまでプノンペンとコンポンチャム州、カンポット州で手 話を教えてきた。
それ以外にもカンボジアの手話研究と、聴覚に障がいを持つ成人が健常者と同じように社会の中 で生活できるよう、職業訓練などにも取り組んでいる。
日本との関わりは、1997年に日本財団からの支援を受け、カンボジアで初の手話表記の文法書と語彙集を出版し たことにある。
出版されたのはクメール語版5冊、英語版4冊で、カンボジアの基本的な手話表記と日常生活で使用される基本的な手話の文法が編纂されている。
DDPの共同代表、キァット・ソクリーさんは、「本を読んだだけでは手話は習得できません。ここに書かれている絵 を見ても、手をどの位置に置き、どのように動かすのかは実際に先生から指導を受けないと習得できないんです。また、手話は手の動きだけでなく、顔の表情も伴いますし、頭をかしげたり、首を振ったりといった動作も必要になり ます。学校できちんと勉強することで習得できるんです」と語る。
入学希望者が地方からやってきた場合、DDPの宿舎で生活しながら2年間の教育を受ける。
職員がコミュニティーに赴いて学生募集をしている。
本人だけでなく、家族の理解も得なければならないため、入学前には施設を見てもら うことにしているそうだ。
2年間のコースを終えると、学生の希望に応じて3年目には職業訓練コース(裁縫、調理、彫 刻、電気修理、美容など)に進学できるという。
現在、全国の学生数は約60人で、指導教員数は7人。
だが、新型コロナウイルス感染拡大により、教員数が2人に削 減され、コンポンチャム州とカンポット州の学校が閉校せざるを得ない状態に陥っている。
「現在は少し苦しい状況ですが、それでも私たちは聴覚障がいを持つみなさんが1人でも多く、社会で生き生きと活躍できる手助けをしていきたいです」とソクリーさんは話す。
つづく
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