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NyoNyum109号特集:カンボジアの社会保障制度 ①国家社会保障基金(NSSF)について

最新号NyoNyum109号の特集は、「カンボジアの社会保障制度」と題して、国家社会保障基金(NSSF)について紹介しました。

誌面版に続き、WEB版でもその詳細をお伝えします!

 

カンボジアの社会保障制度 ~国家社会保障基金(NSSF)について~

国家社会保障基金(NSSF)をご存じですか? NSSFは、主にフォーマルセクター(民間企業)に勤めている従業員や公務員を対象とした健康保険と労働災害保険を司る機関です。

今後、年金支給制度を展開する予定で、国の社会保障制度を執行する重要な機関であり、国民からも注目が集まっています。

これまでに約117万人の従業員と公務員がこのNSSFの制度に登録しています。

これにより、会社員や工員などの民間企業に勤めている従業員、政府機関に勤めている公務員が、妊娠・出産やけがの際にNSSFの健康保険と労働災害保険のサービスを受けることができます。

みんなが注目しているこの社会保障制度。どういうメリットがあるのでしょうか。

政府の今までの取り組みと、民間企業などがこの社会保障制度にどう理解を示し、利用しているのかご紹介します。

 

NSSF設立の背景

歴史をさかのぼると、カンボジア初の社会保障制度は1955年に設立されていた。

だが、ポル・ポト政権下でこの制度が破壊され、1979年にポル・ポト政権が崩壊した後は、1993年までのヘン・サムリン政権下で貧弱した制度ながらも維持されていた。

カンボジア内戦が終焉した1993年に誕生した新政府は社会保障局を設け、民間セクターのための社会保障制度の構築を実施。

その後、1997年にカンボジア労働法が採択され、2002年9月に新しい社会保障法が国会で可決された。

この法律は、カンボジア労働法の規定の下で対象となった労働者のための社会保障制度構築を目的とするもので、法律の制定後、上記の社会保障局の代わりに国家社会保障基金(NSSF)を設立する政令が2007年承認された。

そして、翌2008年末にNSSFが設置され、現在に至っている。

民間企業の従業員を対象に、NSSFは2008年から労働災害のための保障制度を開始した。

そして、2016年には健康保険制度がスタートする。一方、政府機関に勤めている公務員は2018年より健康保険制度の対象となった。

現在の登録者数は1,169,364人(2020年9月末現在)。今後は、年金保障制度をスタートすべく、制度構築を行っている。

 

 

NSSFに加入するにはどうしたらいいの?

NSSFの登録手続きはカンタンです! 会社や所属団体の総務がまとめて登録するのが一般的ですが、どんな仕組みになっているのかのぞいてみよう。

 

NSSF利用者の声を聞いてみよう!その①

現在NSSFでは、NSSFに会員登録をするメリットなどについて、ポスターやSNSなどを通じて発信強化を行っています。

また、NSSFスタッフが労働災害に遭った人や障がいを負った人の自宅を訪問したり地域で説明会をするなど、まだNSSFのメリットを享受できていない人々に根気強く説明をしたり、制度の不具合などの声を集め、日々改善の努力を行っています。

その成果もあって、多くの企業が従業員のNSSF登録を行い、広く浸透し始めているそう。

一昔前は、NSSFカードを持って行っても病院が受け付けてくれない、という状況もありました。

理由は、「カード所有者に治療をしてNSSFに後日治療代を請求しても、なかなか清算してもらえず、病院がこのシステムを嫌がっている」から。では、現在はどうなのでしょう?

NSSF利用者には、妊娠・出産時の女性が多いよう。実際に利用した人たちの話を聞いてみました。

~バーン・スレイキムさんの場合~

プノンペンで会社員として5年近く働いているバーン・スレイキムさん(27歳)は、去年の12月からNSSFの会員登録をした。

今年4月に出産するにあたり、出産前のエコー検査や血液検査、心臓検査などから出産まで、NSSFのサービスを受けることができた。

「NSSFカードを使いたい場合は、その病院がNSSFの提携病院かどうかを調べておくことが必要。患者は窓口でNSSFカードを所有しているか聞かれ、所定の手続きを行います。そうすれば、出産にかかる医療行為に対してNSSFのサービスが受けられます。出産後も、もし体調が悪ければNSSFを利用することができると言われました。民間の病院はわかりませんが、公立病院だとNSSFのシステムがしっかり浸透しているようです。私は都内のカルメット病院を利用しました」

NSSFの情報は公式サイトでも確認できるが、アプリをダウンロードしておくことで自分に必要なサービスの情報がウェブよりも簡単に得られると実感したという。

「今回の出産では、NSSFのシステムのおかげで経済的な負担が軽減されました。NSSFカードを持っているなら遠慮なく利用して、いろいろなサービスを受けるべきだと思います。今回の出産では自己負担がなかったので、この制度にすごく感謝しています」

 

~ヴェン・スレイリアクさんの場合~

2017年からコンポンチュナン州の役所で契約職員として勤めているヴェン・スレイリアクさん(27歳)。

2019年にNSSFの会員登録が完了し、2020年の出産(帝王切開出産)で初めてNSSFカードを利用した。

「このカードを利用して病院にすごくお世話になりました。出産のために病院に行くと、窓口でNSSFカードか貧困世帯証明カードを持っているか聞かれ、NSSFカードと身分証明書を提示しました。病院スタッフはすぐに出産のための入院手続きをしてくれました。出産後は、育児休業手当支給の申請について教えてもらい、主人に申請に行ってもらったんです。今回の出産費用でまったく自己負担はなかったですし、出産前後のケアサービスもあると教えてもらい安心しました。病院のスタッフには本当に良くしてもらいました」

退院時に出生証明書を医師が出してくれるなど、入院から退院までNSSFカードのおかげで適切なサービスを受けられたと実感するスレイリアクさん。

「政府機関や民間企業に勤めている人、特に女性はぜひこのNSSFの会員に登録してください。友達にもこのことを伝えてあげようと思います」と話してくれた。

 

NSSF利用者の声を聞いてみよう!その②

NSSFに登録した多くの妊娠中の女性は、健康保険の中からいろいろな手当が受けられるようです。その内容についてはNSSFも積極的に周知活動を行っています。どのようなサービスがあるのか簡単に見てみましょう。

 

◉ 妊娠から出産、産後の医療サービス費用の免除

◉ 出産の直前と後の90日間の育児休暇の間は、基本給の70%の日当分の手当が受けられる(条件:出産日まで最低9カ月間、NSSFに保険金を支払うこと)(*)

◉ その他各種の政府からの手当(それぞれ条件が異なる)
*育児休業手当の支給をNSSFから受け取るためには、出 産後に本人が以下の書類をNSSFに提出する必要がある:

◉ NSSFカード

◉ 退院証明書または出生証明書、または出産したことを証明する書面、身分証明書、電話番号

◉ 職場からの90日間の育児休暇の許可証明書

◉ 育児休業手当支給申請書

◉ 夫または親戚が代理申請する場合、その委任状と本人の身分証明書も持参すること
※ NSSFの会員がNSSFと提携しない病院などで出産した場合でも、基本給の70%の日当の手当支給を受け取ることが可能。条件は、出産直後にNSSFと提携した病院で健康診断をすること。そのあと、手当支給申請書を提出すること。

※ 今年の8月1日から31日までの1カ月間でNSSFを利用して出産した女性は5,662人。双子を出産した女性が37人だったので、新生児数は5,699人だった。

 

健康保険のほかに労働災害も充実! 外国人も恩恵を受けられます!

健康保険のほかに、NSSFには労働災害保険もあります。労働に支障をきたす病気やけがも、負担金ゼロで治療できるようです! さらに、カンボジア労働法のもとで働く外国人も、登録をしていればしっかりサービスを受けられるようです。ここでは、健康保険を利用した外国人の事例をご紹介します。

 

~インド出身のスワーラッチ・ゴーロングさんの場合~

プノンペンの「グローリアジーンズコーヒー」に勤めているインド出身のスワーラッチ・ゴーロングさん(33歳)。カンボジア人の女性と結婚して今1人の子どもがいる彼は、2018年にNSSFに登録した。数カ月前に顔にできものができてしまい、ボンケンコン地区にある民間クリニックで2回手術をした。

「治療を受けるための手続きも簡単でしたよ。自分のNSSFカードと勤務先の会社名を告げるだけで済みました。提携病院の医療技術も適切だったし、NSSFのサービスには非常に満足できました。この制度に加入していて本当に良かったと思います」とスワーラッチさん。

 

健康保険を利用する場合の手当金申請では、以下の書類をNSSFに提出する:

◉ 退院届(入院と退院の日付が明確に書かれている医師からの書類)
◉ 手当金支給申請書
◉ 会社からの休暇証明書
◉ 身分証明書
◉ NSSFカード

ただし、すべての病気やけがの治療をカバーしているわけではない。保険適用外の病気・治療の主な項目は以下の通り。

▶ 歯の治療
▶トランスジェンダー手術
▶ 臓器の移殖
▶ 人工授精
▶ 整形手術
▶レーシック治療
▶ アルコール中毒治療と薬物依存症治療
▶ 不妊治療
▶ 義眼手術
▶ 心臓血管外科治療
▶ 透析
▶ 一般健康診断
※緊急の場合は上記のものが適用となる場合もある。

 

つづく