現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum119号の特集のWeb版です。
「変わりゆくクメール女性たち~古来から現代につづくカンボジア女性の姿~」
経済発展が進むカンボジアでは、省庁や民間企業での女性の活躍が目立つようになっています。カンボジアの伝統風習では、女性は結婚して妻となり、主婦として料理・洗濯・夫や子供、親の世話をして家を切り盛りするものとされてきました。
しかし現代では、家事に加えて仕事をして収入を得る女性が増えています。主婦の80% が家計に収入をもたらす仕事をしているとする調査結果も。
一方で、古来カンボジアでは社会における女性の地位は高く、それを示す文化・思想も多く残っています。そして今もカンボジア人女性の心の中にしっかり根付いています。
では、カンボジア社会における女性の伝統風習とはどんなものなのでしょう?そして現代において働くカンボジア人女性の環境はどのように進化しているのでしょう?
カンボジア人女性の伝統風習いろいろ
どこの国の人でも、自分の子供たちに伝統風習や社会に沿ったしつけをし、将来国を背負って立つ人として育つことを願うもの。カンボジアにも、古くから子供のしつけにおける習わしや行動規範があります。現代のカンボジアでもこの考え方は心の奥底に息づいており、何かの折に「女性としてあるべき姿」として取り上げられているんです。
クメール子女教育の元祖「チュバップ・スレイ」(女性の行動規範)
フランスがカンボジアを植民地とする以前、カンボジアでの教育は寺で行われていた。僧侶が教師として子供たちを教育する。カンボジアの仏教(小乗仏教)では僧侶が女性と触れることはご法度とされていたため、女の子は寺子屋に行くのが難しかった。そのため、女の子は家で時間を過ごし、家事手伝いをしながら成長していく。
その成長過程で、女の子が家庭内で受ける教育に「チュバップ・スレイ」というものがある。1837年にオン・ドゥーン王が詩の形式で執筆したのが元となっているが、1957年に文学作家ムン・マイによって新たに執筆された。この詩は嫁ぐ前の娘に母親が家庭内の平穏を維持し、穏やかに歩き、話し、夫に従い、敬い、「良き妻」「良き母」となるよう助言するものとなっている。
ムン・マイ作「チュバップ・スレイ」(1957年)一部抜粋と対決
話しをするときは 女性の名誉のため ふざけた話をしてはいけない。
子供のような話し方は 男性がそれを見て 近づいてくる。
思慮のない笑い方は 悪い男に 隙を与える。
できの悪い女品のない女 マナーのない女だと言われる。
チョール・モロップ(女性の通過儀礼)
女性の行動規範を学んだ女の子が初潮を迎えるときに行うのが「チョール・モロップ」という儀式である。フランス植民地時代より以前は全国各地でこの儀式が行われていたが、フランスの統治により近代的な教育が広がったため、今では実施している地域は少ないが、現代カンボジア人の中ではこの儀式は記憶の中に存在する。
その家の経済的な余裕の度合いにより、3~ 6カ月間にわたり、娘を家の中(一部地域では儀式のための小屋を建てることもある)に籠らせ、そこで料理や裁縫、前述の「チュバップ・スレイ」などの教育を行い、結婚や出産、その後の家庭での仕事の心構えを身に付けさせる。このチョール・モロップの期間中は、食事は1日に一度もしくは僧侶と同様に1日2回、主に精進料理を食す。
また、男性と関わることや、日中の外出も禁じられている。外に出られるのは夜間に水浴びをするときなど、行動範囲も狭い。一定期間が過ぎると、チェン・モロップという盛大な儀式が行われる。この儀式を行うことで、この家に結婚適齢期の娘がいるということを世間に知らせる意味合いもあるようだ。そして、3~6カ月間家に籠っているため、チョール・モロップを経て外に出てきた娘は、色白で美しくなっている。
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