現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum120号の特集のWeb版です。
「より住みやすい街を目指してーシェムリアップの今を歩こう!ー」
シェムリアップ州は世界遺産アンコールワットを有し、カンボジアで最も観光が盛んな地域。しかしこの2年来、新型コロナの影響で観光業が大打撃を受け、まるでゴーストタウンのようになってしまった市内の様子が、日々SNS等で伝えられていました。
そんなシェムリアップは、コロナ前の2018年にプノンペン、バッタンバンとともに、日本政府が支援するASEANスマートシティ・ネットワークのパイロット都市として採択されました。また、シェムリァップ州政府は2020年11月30日より市内38本の道路整備事業を開始し、コロナ禍で町全体が静まり返っている中での工事に人々は驚きを見せましたが、13カ月ですべての工事が終了し、街は美しく生まれ変わりました。
そして今、コロナ禍を抜け出しニューノーマルの生活を目指すカンボジアには、少しずつ観光客やビジネス客が戻り始めています。待ち望んでいた観光産業の再稼働に期待が膨らむシェムリアップも、この38本の道路整備を皮切りに信号設備、街灯、歩道等の整備が進み、スマート化に向けて大きく踏み出そうとしているように思われます。
シェムリアップが目指すスマートシティとはどういう姿なのでしょうか。そして現地の人や事業者たちは、この新たな発展への取り組みをどのように感じ、何をしようとしているのでしょう?
コロナ禍で生まれ変わったシェムリァップ
「スマートシティ」について聞くと、いまいち反応が薄いシェムリァップ市民。一方で38本の道路工事についてはさまざまな反応が返ってきました。観光業が打撃を受け、その中で街が整備され、さらにこれからスマート化をしようとしていることについて、住民のみなさんどのような思いを持っているのでしょうか。
ピンチはチャンス!美しい街が広がるシェムリァップの今
コロナ禍で観光客が激減し、ホテル、レストラン、娯楽施設が軒並み休業に追いやられたシェムリァップ。2020年、街はまるでゴーストタウンのようになってしまった。そんな中、州政府は市民はもとより国内中が驚く行動に出た。それが38本の市街道路の整備だった。これとともに歩道、自転車用道路を整備したほか、洪水対策の排水設備、駐車スペースや交通標識、街灯、防犯カメラの設置、電線や各種ケーブルの地下埋設、公園整備などが次々に行われた。これに加えて、シェムリァップ川4,525m の護岸改修工事を行い、今後増加が見込まれる人口、観光客数に応える準備が古い建物や自然環境を保護しながら行われていった。
38本の道路工事は、単に市内の景観を美しくすることだけが目的ではなく、市街地と郊外の交通・物流を円滑にし、交通渋滞を解消することにつながる。コロナが落ち着けばシェムリァップでの観光や国際会議が活発になることが予想される。コロナにより経済・社会活動が大打撃を受けたシェムリァップだが、「ピンチはチャンス」と捉えてかねてからのスマートシティ構想に着手した州政府の決断は、あっぱれだったと言える日もそう遠くない日に来るかもしれない。
【トゥクトゥク運転手】チャエム・チャンニァンさん(47)
スマートシティ開発については聞いたことはないな。でも、コロナ禍の2 年ちょっとの間に市内はすごく美しくなったね。みな「38本道路」のことはよく知っているよ。道路整備で道がきれいになったので、運転が楽になったし観光客にとっても良いことだね。これからスマートシティプロジェクトが進んでいくというけど、今とどう変わるのか楽しみだよ。コロナでお客さんがまったくいなくなって、街も静まり返って収入が得られなくなったけど、この数カ月は国内観光客が戻ってきてトゥクトゥクを利用する人も増えてきた。スマートシティ開発によって地元住民が豊かになっていくことを期待したいね。
【アンコール高校3年生】ハン・ニサーさん(19)
この開発に感激しています。学生である私にとっては通学が楽になるし、街がさらにきれいになったので嬉しいです。スマートシティについてはよくわかりませんが、語学などをもっと勉強して、将来この街で仕事に就いて役に立つ人材になりたいです。
【USEA大学】サェム・スレイペイッさん(22)
スマートシティのことは知りません。でも、38本の道路が整備されて本当に良かったです。私も含め、住民の交通がとても楽になりました。2、3年前と比べても大きく変わりました。以前は道路幅は狭く、路上販売をしているところに車やオートバイが駐車されていて、通り抜けるのが難しかったんです。でも、今はすべての道路が以前より広くなり、交通渋滞も解消されたと思います。将来、シェムリァップ市がスマートシティとなるのであれば、語学や技術などもっと勉強をして時代に追いつけるようにしたいです。
【USEA大学】ソム・ソンさん(23)
スマートシティについては聞いたことがありません。でも、38本の道路整備はよく知っています。コロナ禍でシェムリァップの街がすっかり静まり返る中で、道路整備や市内の美化が行われたのを見てきました。地元住民にとっても街を訪れる観光客にとっても、交通渋滞がなく往来できるようになるのでとても嬉しいです。
【トゥクトゥク運転手】リァム・ソコムさん(60)
1年くらい前にスマートシティのプロジェクトの話を聞いたのを覚えています。この開発によって住民の生活がより良く、豊かになることを期待しています。道路が整備されたことによって自転車レーンなどもでき、交通事故が減ったし以前より交通事情は大きく改善したと思う。日常的にも道路は衛生的になったね。これを機に、住民が公衆衛生の問題などの理解を深められたらいいと思う。
【オールドマーケットで絵画・土産販売】リー・ヴィチェットさん(40)
シェムリァップに国内観光客が戻り始めてきました。コロナ禍で店を閉めていたけど、ちょうど3 カ月前から再開できました。コロナの影響で市場の賃料を払えず廃業した人もいたね。スマートシティは聞いたことがないし、38 本の道路整備がその一環だということは知らない。でも、道路が整備されたことで渋滞は減ったし、移動が楽になった。美しくなったこの街に観光客が戻ってきてほしいね。
【オールドマーケットで衣類・土産販売】コァム・チャンニーさん(24)
38本の道路をはじめ、市内のあちこちが再開発されたのを見て嬉しく思います。コロナが蔓延していた頃は、お客さんもいなかったし市場での商売はほぼできませんでした。今年に入って国内観光客が戻ってきましたが、外国人客はまだあまり見かけません。今後、正常な状態に戻ったら店を広げて商品数も増やしたいです。そしてスマートシティの整備が進んだときに対応できるよう、準備していきたいです。
【オールドマーケットで干物・加工肉を販売】ハップ・サリーさん(53)
この商売を営み30年。コロナ前はプノンペンから来た観光客がシェムリァップ名産を買ってくれ商売は上々だったけど、コロナが発生しロックダウンなどもあり商売は大きく低迷しました。最近は、常連さんが戻ってきてくれて、少しずつ良くなっています。街がきれいになり、発展していることを感じます。これを魅力にして、多くの観光客が来てくれることを願っています。
【パブストリートのアイスクリーム店バイト】カン・ソポルさん(20)
夜になると多くの人でにぎわうパブストリートも、コロナ禍は静まり返っていました。道路や公園の整備が行われ、街がきれいになったと実感しています。観光客だけでなく住民にとっても魅力的な街になっていけばいいと思います。スマートシティのことはよく知りません。
【フィッシュフットマッサージ店マネージャー】ソック・ペーンさん(31)
スマートシティのプロジェクトがあるというのは聞いたことはあるけど、具体的なことはよく知りません。38本の道路整備のことはよく知っています。美しい街になり、渋滞が解消され、街が大きく変化しました。スマート化してさらに魅力的になるであろうこの街で、さらに商売を広げていきたいです。
【伝統衣装着付け店経営】トリー・ソコンティーさん(30)
この店を始めて3年。アンコール時代、ロンヴェーク時代、ウドン時代、チャトモック時代などの衣装を用意しています。コロナ前は多くのお客様が来てくださっていましたが、コロナ禍で休業を余儀なくされました。今は少しずつ業務を再開していますが、以前の状態に100%戻ったわけではありません。スマートシティについて聞いたことはありませんが、38本の道路整備はよく知っています。美しく魅力的な街になったと喜んでいるところです。今後、多くの国内外の観光客が来てくれることを期待しています。
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