NyoNyum120号特集:③コロナ禍を乗り越えニューノーマルへ~シェムリァップでビジネスを営む人たちの思い~
NyoNyum120号特集:③コロナ禍を乗り越えニューノーマルへ~シェムリァップでビジネスを営む人たちの思い~
2022.10.03

現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum120号の特集のWeb版です。

「より住みやすい街を目指してーシェムリアップの今を歩こう!ー

シェムリアップ州は世界遺産アンコールワットを有し、カンボジアで最も観光が盛んな地域。しかしこの2年来、新型コロナの影響で観光業が大打撃を受け、まるでゴーストタウンのようになってしまった市内の様子が、日々SNS等で伝えられていました。

そんなシェムリアップは、コロナ前の2018年にプノンペン、バッタンバンとともに、日本政府が支援するASEANスマートシティ・ネットワークのパイロット都市として採択されました。また、シェムリァップ州政府は2020年11月30日より市内38本の道路整備事業を開始し、コロナ禍で町全体が静まり返っている中での工事に人々は驚きを見せましたが、13カ月ですべての工事が終了し、街は美しく生まれ変わりました。

そして今、コロナ禍を抜け出しニューノーマルの生活を目指すカンボジアには、少しずつ観光客やビジネス客が戻り始めています。待ち望んでいた観光産業の再稼働に期待が膨らむシェムリアップも、この38本の道路整備を皮切りに信号設備、街灯、歩道等の整備が進み、スマート化に向けて大きく踏み出そうとしているように思われます。

シェムリアップが目指すスマートシティとはどういう姿なのでしょうか。そして現地の人や事業者たちは、この新たな発展への取り組みをどのように感じ、何をしようとしているのでしょう?

 

コロナ禍を乗り越えニューノーマルへ~シェムリァップでビジネスを営む人たちの思い~

シェムリァップは世界でも有数の遺跡観光地。新型コロナの影響で2年以上にわたり観光産業に携わる大型ホテル、ブティックホテル、ゲストハウス、カフェ、飲食店などは休業を余儀なくされました。2022年に入り国内感染が激減し、カンボジア政府が水際対策を緩和したことで観光産業復活の兆しが見え始めています。観光業に携わる人々も、ただ手をこまねいてこの状況をやり過ごしていたわけではありません。これからの観光誘致に向けて、あの手この手を駆使して観光客受け入れの準備を進めています。変わり始めたシェムリァップのビジネスをご紹介します!

 

ワットダムナック周辺を歩いてみよう!

ワットダムナック

2015年頃から素敵なブティックホテルが建ち始めたワットダムナック周辺。夕暮れ時に焼肉を楽しむカンボジア人で溢れるエリアは「サイッコーアン・ワットダムナック(=ワットダムナックの焼肉)」と呼ばれ人気を集めています。コロナ以前から観光客と地元の人で賑わっているこのエリア。州政府による道路整備プロジェックトが終了した今の状況を探ってみました。

オールドマーケットの東に流れるシェムリァップ川を渡ったところにあるワットダムナック。この寺は、もともとシソワット王の別荘として建設されたが、1900年代前半に王の別荘が現在の場所に移り、その後旧別荘跡が寺になったという。ワットダムナック周辺は10年ほど前までインフラ整備が整っておらず、赤土の入り組んだ路地に地元の人々が生活するエリアだった。しかし、今やおしゃれなカフェやバー、ブティックホテルなどがどんどん増えている。

 

CAFE Roly Poly

5年前にこのエリアにカフェをオープンした日本人夫婦がいる。シェムリァップに来た2006年当時は旅行会社に勤めていたという深井寿久さん。この5年間で感じたカフェから見たシェムリァップの状況について話してくれた。

「この数年でカンボジアの人が好むコーヒーのトレンドが変わったと感じます。以前は、カンボジア人はベトナム人が経営するカフェでテレビを見ながら甘苦いコーヒーを飲むのが好きでしたが、最近ではカンボジアの若い経営者がおしゃれなカフェをオープンし、地元の若者はコーヒー本来の風味を楽しむようになってきました」

オープン当時は在住日本人客が多かったが、数年ほど前からカフェブーム到来で地元住民、特に若いカンボジア人が店を訪れるようになったという。

「この2年間のコロナ渦で市内で道路整備工事が行われ、道が舗装されきれいになり、埃が少なくなりました。街自体はもちろん、このエリアもきれいになりました。カンボジア人の学生さんもカフェに来てくれるようになり、店近辺も活気が出てきています」

深井さんは州政府が計画しているスマートシティについて、「スマート化が進んでも街の歴史的部分はきちんと守り、また市民が社会のルールを理解しながら生活するようになると良いと思います。私はそんな地元のみなさんに愛されるカフェを続けていきたいです」と語った。

チーズケーキ
枝豆とベーコンのパスタ

 

CAFE Roly Poly

住所:Concrete Road Wat Damnak Village, Sangkat Boeung Leeurk, Siem Reap

電話:012-226-300

営業時間:9:00-18:00 (Tue & Wed closed)

 

Fellini

ワットダムナック小学校近くのバンブーストリートを南へ約50m進み、右手の小道をさらに50mのところに、最近人気のイタリアンレストラン「Fellini」がある。モダンで清潔感のある内装で、経験豊富なカンボジア人シェフが地元の食材とイタリアから仕入れた調味料を使って本格イタリアンを提供している。スタッフも観光業に長年従事してきた人たちばかりで、サービスの質にも一目置かれている。新型コロナの感染が拡大し始めた2020年以降も安定した味とサービスに定評があり、わざわざプノンペンから訪れる人や地元の外国人客から支持を受け続けている。

シェフお勧めのピザ「Nordica」
明るい人柄のマネージャー、リーン・ソムニアンさん(32)

 

Fellini

住所:Bamboo Street, Wat Damnak Village, Siem Reap

電話:061-448-899

営業時間:18:00-22:00 (Mon closed)

 

Wat Damnak House

ワットダムナックのすぐ近くに、クメール様式の家屋や家具を活かしたブティックホテルがある。古き良きカンボジアスタイルと近代的な設備を有するこのホテルは全部で6 室あり、カンボジアの家庭的な雰囲気を楽しめる。周囲が緑で囲まれたプールもあり、自然を感じながらゆったりとしたひと時を過ごすことができる。

大型ホテルではなくプライベート空間を好む欧米の観光客から2018年のオープン以来人気を集めてきた。コロナ禍で客足は減ったものの、長期滞在プランを提供することで持ちこたえてきたそう。観光客が本格的に戻れば、さらに活気づくこと間違いなしだ。

Wat Damnak House

住所:Wat Damnak, Road 141, Siem Reap

電話:061-448-899

 

サイッコーアン・ワットダムナック

ワットダムナックの門の前のエリアにはカンボジア風BBQ の店が立ち並び、地元の人々から「サイッコーアン・ワットダムナック(=ワットダムナックの焼肉)」と呼ばれている。シェムリァップの特産品「プラホック(塩漬けにした魚のペースト)」を使ったたれをつけて食べる牛肉BBQは絶品で、家族や友達と一緒に焼肉を楽しむ地元の人たちの姿が多く見られる。

この一角にある店の店員ソピアさんは、「この2年、コロナの影響でお客さんが激減しました。でも最近は徐々に回復しつつあります。サイッコーアン・ワットダムナックの夕方の活気と美味しい焼肉を観光客のみなさんにもぜひ食べていただきたいです!」と話してくれた。

メニュー紹介:国産牛、ホルモンなどのBBQ(焼肉以外のクメール料理のメニューもあり)

食べ方:プラホックのたれに刻んだレモングラスや唐辛子、ピーナッツを入れ、生野菜や焼肉をたれにたっぷり絡めて食べる。

値段:焼肉一皿(小)約5ドル

サイッコーアン・ワットダムナック

 

 

アンコール中学校周辺のおしゃれなカフェが大人気!

ワットダムナックエリアからさらに東に行くと、アンコール中学校があります。この付近は、私立大学や英語を中心とした言語学校、塾が集まり、学生で賑わうエリア。道路整備によりコンクリート舗装されたこのエリアを歩いてみると、素敵なカフェやレストランが点々とオープンしているのが目に入ります。その中で、コロナ渦で開業し、地元の若者たちから人気のカフェ「The Bean Embassy」と「Chocolate Garden」の若きカンボジア人オーナーに開業のいきさつなどを聞いてみました。

 

The Bean Embassy & Chocolate Garden

The Bean Embassy はシェムリァップの若者に人気のカフェ。セーン・ピセットさん(33)を中心とするカンボジア人のグループで経営している。

「2020年9月にオープンしました。自分たちで豆の焙煎をしながら、いろいろな味わいのコーヒーを提供しています。飲み比べて、自分好みのコーヒーを見つけてオーダーしてくれる人が多くなってきました」。

The Bean Embassy に入るとクメール人が工夫したエレガントな店内インテリアが印象的

最初はThe Bean Embassy から始めたビジネスだったが、地元に根付いていくうちに、この辺り一帯の発展の可能性を感じたという。そして、2022年2月に新しい店「ChocolateGarden」を開店した。

お店の名前は店が面する「チョコレート通り」という道からとったもの。シェムリァップの街が広がりつつある中で、まだ未開発のこのエリアは敷地が広く、自然が残っている。この環境に魅せられたピセットさんたちは、最初の店とは違う雰囲気の店づくりをすることに決めた。

Chocolate Garden のエントランス

「Chocolate Gardenは、シェムリァップの他のカフェと比べてもユニークだと思います。単にコーヒーやフードメニューを提供するだけでなく、訪れたお客様が街の喧騒を離れてリラックスできる空間を提供するのがコンセプトです」。

その言葉通り、一歩店内に足を踏み入れると静寂の中に緑が生い茂り、涼しい風が通る広々とした庭が広がる。クメール様式の家屋を、元の姿かたちを壊さないように配慮しながら改装したという。店内には図書スペースや子供の遊び場があるほか、ペットも同伴可能。

ピセットさん

今後はウィークエンドマーケットを開催したり、お客様のニーズに合わせて各種イベントを行う計画があるそう。「ウィークエンドマーケットでは、カンボジアの伝統工芸品を販売したり、布に絵を描くイベントやカンボジアのお菓子作り教室を開催したりして、地元住民にも参加してもらいたいと考えています」と語るピセットさん。経営者仲間とさまざまなアイデアを出し合い、近い将来バーやレストランもこのチョコレート通りに展開し、地元の人々が働いたりさまざまな形で関わる場を作っていきたいと目を輝かせる。

スマートシティの計画について聞くと、「シェムリァップの街がASEAN の他都市とつながっていくこの構想に期待しています。現代の社会発展に即した考え方だと思うし、こういった都市開発を通じて地元住民の生活やビジネスがさらに豊かになってほしいと思います。そのためにも、この計画が実行されることによって、住民にどのような利益がもたらされるのかを周知する必要があると思います」と語った。

 

The Bean Embassy

住所:#0187, Chocolate Road, Siem Reap

電話:078-631-989

営業時間:7:00-18:00 (everyday)

 

Chocolate Garden

住所:#56, Chocolate Road, Siem Reap

電話:11-299-663

営業時間:7:00-21:00 (everyday)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

関連記事

クメールの民間治療のあれこれ!

2024.03.22 特集記事生活情報誌ニョニュム

クル・クメール協会の会長インタビュー

2024.03.08 特集記事生活情報誌ニョニュム

薬草の商売とは?

2024.03.01 特集記事生活情報誌ニョニュム

クメール薬草採取の仕事とは?

2024.02.23 特集記事生活情報誌ニョニュム

薬草対象のクメール植物って?

2024.02.16 特集記事生活情報誌ニョニュム

カンボジア生活情報誌「NyoNyum129号」発行のお知らせ!

2024.02.09 特集記事生活情報誌ニョニュム

灯篭飾りの意味解説

2024.01.24 特集記事生活情報誌ニョニュム

おすすめ記事