現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum122号の特集のWeb版です。
「お茶の間の娯楽はやっぱりテレビ!?」
カンボジアでは2012年頃からテレビ業界の競争が激化しました。2012年1月には、以前はカラオケを中心としたミュージックビデオやCD 制作・販売で有名だったHang Meas社がテレビ業界に参入し、Hang Meas HDTVというテレビ局を開局。一方、国営テレビのTVKも民放テレビ局と競り合うために放送時間を延長しました。
しかし、カンボジアでは2013年頃からインターネットの利用ユーザーが急増し、各テレビ局はより多くの視聴者を求めてSNS、特にFacebookに目を向けるようになっていきました。人気番組だと通常のテレビ放送はもちろん、Facebookでも視聴できるようになり注目を集めています。
そこで今回の特集では、今のカンボジアのテレビの現状についてとことん調べてみました!
あなたはテレビ派?SNS派?
大衆の娯楽「テレビ」。周りに民家のない田舎の水田に囲まれたぽつんと建つ家を訪れると、家財道具はほぼないのに家の真ん中にテレビが置かれている、なんていう光景も見られるほど。だが、昨今はインターネットの普及やSNSの台頭でテレビを見る人の数は減りつつあります。カンボジアの現状は?視聴者の声を聞いてみよう。
<視聴者の声1:プノンペン在住の記者:ソピア・リナーさん(21)>
<視聴者の声2:シェムリァップ在住:へー・ヴィエスナ―さん(37)>
<視聴者の声3:シェムリァップ在住:ノップ・ヴィセットさん(43)>
<視聴者の声4:バッタンバン在住の土木作業員:クイ・トラさん(36)>
<視聴者の声5:コンポンチャム在住の自営業:スイ・ソマヌットさん(23)>
<視聴者の声6:シェムリァップ在住の会社員:セーン・ナリットさん(26)>
<視聴者の声7:シェムリァップ在住:チュム・セイレイさん(42)>
もっと多くの人の声を聞いてみよう!~数字で見る「みんなの声」~
インターネット・スマホの利用者数が激増している今のカンボジア。SNSでテレビを視聴する人の数も増えています。では、従来のテレビで番組を視聴する状況とはどう変わっているのでしょうか?現状を詳しく知るため、プノンペンの大学生(66人)と一般市民(50人)にアンケートを行いました。
※左列は大学生66人中の割合 – 右列は一般市民50人中の割合を示すもの
テレビの視聴実態について (大学生 – 一般市民)
1. 普段テレビを見ていますか。
A. 見ている(20% – 62%)
B. 1~ 2年見ていない(26% – 20%)
C. 3~ 4年見ていない(27% – 14%)
D. 5年以上見ていない(27% – 4%)
2. 普段どのようにテレビを見ていますか。
A. テレビで見る (36% – 26%)
B. スマホで見る (40% – 10%)
C. テレビとスマホの両方で見ている( 24% – 64%)
3. 次のうちどのチャンネルが好きですか。(複数回答可)
A. Hang Meas HDTV(またはRasmey Hang Meas HDTV( 61% – 68%)
B. CBS(またはCTN、MyTV、CNC ( 21% – 24%)
C. Bayon TV(またはBTV) (21% – 48%)
D. PNN (44% – 44%)
E. TV5 (5% – 52%)
F. TVK (9% – 8%)
G. どのチャンネルも特に興味がない( 0% – 0%)
4. どんな番組を見るのが好きですか。(複数回答可)
A. エンタメ(コメディ、音楽など) (85% – 44%)
B. 教育関係 (23% – 26%)
C. ニュース (21% – 88%)
D. スポーツ (18% – 56%)
5. あなたまたは家族はどのようにテレビを見ていますか。( 複数回答可)
A. 無料アプリ(PPCTV、One TV Plus など)で見ている (50% – 10%)
B. 有料アプリを使って見ている (6% – 0%)
C. アンテナを設置してテレビで見ている(30% – 40%)
D. ケーブルテレビを利用している (27% – 64%)
6. 家族でテレビを見るのが好きですか。それとも一人で見るのが好きですか。
A. 家族で見るのが好き (70% – 80%)
B. 一人で見るのが好き (30% – 20%)
7. 最近も家族と一緒にテレビ番組を見ることは多いですか。
A. 頻繁に見ている (11% – 30%)
B. 時々見ている (20% – 38%)
C. あまり見ていない (44% – 32%)
D. 一度も見ていない (25% – 0%)
テレビ番組以外のSNSで独自に制作され発信たコンテンツの視聴実態について
(大学生 – 一般市民)
1. SNS(Facebook、YouTubeなど)で発信されるコンテンツを見るのは好きですか。
A. 好き (42% – 44%)
B. ある程度好き(56% – 56%)
C. 好きではない (2% – 0%)
2. どのようなコンテンツをよく見ていますか。(複数回答可)
A. 奇人変人のコンテンツ (21% – 44%)
B. 教育関係 (33% – 28%)
C. Video Vlog (53% – 4%)
D. 映画や新商品などのVideo Review (58% – 4%)
E. 番宣 (21% – 2%)
F. コメディ(38% – 52%)
G. スポーツ(18% – 58%)
H. ニュース(29% – 86%)
3. カンボジアのユーチューバーやFacebook 動画のクリエーターで知っている人はいますか。
A. いない (55% – 90%)
B. いる (45% – 10%)
4. テレビで放送される番組と比較して、YouTubeやFacebookで配信されている動画についてどう思いますか。
A. 非常に面白い (29% – 26%)
B. まあまあ面白い (68% – 70%)
C. あまり面白くない (3% – 4%)
カンボジアメディア「今昔物語」
今回の特集取材を通じて、カンボジアのテレビをめぐる「今」が見えてきました。SNSが台頭し始めているとはいえ、歴史あるテレビ業界は今も健在です。ここでは、カンボジアのテレビ業界の歴史と、新たな流れをご紹介します。
カンボジアのテレビ放送とインターネット利用状況について
カンボジア初のテレビ局であるカンボジア国営テレビ(TVK)が1966年誕生。しかしポル・ポト時代に完全に破壊されてしまう。1979年にはヘン・サムリン政権の誕生とともにTVKも再開された。当時は1日4時間しか番組を放送できなかったという。
1986年になると、日本の全面的な支援を受けてTVKが再建されることに。放送施設や機材・設備を日本は提供し、1998年に正式に番組放送が開始された。放送環境の向上により、1日の放送時間は4時間から14時間に延長され、衛星放送により126カ国のテレビ番組も見られるようになった。
一方、1986年頃までカンボジアにはTVKのほかにベトナムの生番組を放送するテレビ局やフランスのテレビ局、地方のテレビ局など含めて合計15のテレビ局が存在していたという。
長引いた内戦が終息すると、カンボジアの電気通信分野は次第に成長を見せ始めた。特に2012年頃からテレビ業界の競争が激しくなり、新しいテレビ局が開設され、既存のテレビ局もこの競争の波に乗るべく新しい番組制作に努めた。
その一方で2013年に入るとカンボジアではインターネットの利用者が急増し、その傾向はテレビ業界にも影響を及していく。2010年のインターネットユーザー数を見てみると32万人強だったが、2013年になると約270万人に膨れ上がった。2020年は1,600万人以上のカンボジア人がインターネットを使用し、そのうち約1,090万人がFacebookユーザーだという。
個人によるメディア発信の現状について
インターネットユーザー数が増加したことにより、家庭でテレビ番組を見る視聴者数は大幅に減少している。15年ほど前までは、家やレストランなどに集まってテレビ番組を視聴するのが一般的だったが、技術の進歩やインターネット普及に伴うスマホの使用により、家庭でテレビを見る姿は次第に薄れてしまっている。
さらにSNSのユーザー数が増加するにつれて、FacebookやYouTubeなどでコンテンツを独自に配信するカンボジア人も現れ、彼らによる情報配信にも注目が集まっている。
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