現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum125号の特集のWeb版です。
「工場で働くということ~プノンペン周辺工場労働者の職と生活の現状あれこれ~」
縫製業やアパレル業などで約90万人の労働者の仕事を生み出すカンボジア。全国1326の縫製工場のうち、727の工場がプノンペンにあり、約34万人の労働者が従事しています。
そんな首都プノンペン郊外の、特にチャオムチャウ町 (プノンペン国際空港の西南部エリア)には工場エリアが広がっています。若い労働者向けの借家や団地もあり、縫製業などに従事する工場労働者が生活しています。そのため、この地区にある工場周辺には日常生活に欠かせない品々や飲食店などがすらりと並び、いつも人々でにぎわっています。
主に地方から集まってくる労働者たちは、この環境でどんな生活を営んでいるのでしょうか。その実態の一角をご紹介します。
遠距離通勤で頑張ってます!!タケオ州の自宅から毎日プノンペンの工場へ通勤する工員リポート
靴工場に勤めているエーン・シムへ―ンさん(40)。3年前にタケオ州の実家でやっていた畑作を辞めて、プノンペンの靴工場で工員として働くことを決意。しかし、プノンペンに移住はせず、自宅から工場まで工場の通勤専用車で片道1時間半、日々遠距離通勤をしているといいます。
元々家で畑作を営んで生活していたシムへ―ンさんだが、数年前にプノンペンの靴工場へ就職を決めた。
「村の人たちが工場の仕事に就いて生活が良くなった様子を見て、自分も憧れました」。
実は6年前にも一度工場の仕事に就職しようと挑戦したが、病気にかかった親の面倒を見るため、その志を断念した。今は年老いた親の面倒は2人の子供が見てくれるようになり、以前から思い続けていたプノンペン郊外の工場に通勤し、工員として働いている。
安定した収入が工員の魅力だと語るシムへ―ンさん。
「今までは実家の畑で作物を育てて生活してきましたが、やはり気候に収穫が左右されるのと、輸入野菜の価格競争で立ち行かなくなり、不安定な畑作からの収入よりも損をしない、そして何よりも収入が安定する工場の仕事をした方が良いと思ったんです」。
中学3年生の娘と中学2年生の息子の教育費や家計の安定のためにも、定期的な収入を得ることは親としての義務だと思うと話す。
「子供が大きくなり、学校も遠くなったので通学のためのバイクも必要です。また今ではスマホも一人一台は必要など、多様な生活の変化に伴い家庭の出費も変化するので、それに応じる安定した収入源を探さないといけないのです」
そんな「出費」に応じてくれるのが金融機関ということで、子供の通学用バイクの購入、新築したトイレの建築費用などを地元の金融機関から借りたという。その前提条件が「安定収入」があるかどうかだ。
「工員としての給与証明と土地の登記簿などの書類を出せば、マイクロファイナンスからローンを受けることができます。現在、そのローン返済と日々の生活のために働いています」
工員としての経験がなかったシムへ―ンさんだが、採用時には同じ靴工場に勤める親戚の紹介もあり、採用が決まったという。
「応募したときは靴作りの経験は全くなかったんですが、採用後に教育を受けて真面目にやっていけば問題ありませんでした」
親と子供の面倒を見なくてはいけないシムヘーンさんは、住み慣れている故郷を離れて見知らぬ土地に住んで働く選択肢はなかった。
「今の職場は毎日行き来して仕事ができるため働くことを決めました。親も年をとっているし子供もまだ中学生なので、面倒を見ないといけない。仕事のための移動はちょっと面倒ですが、畑の仕事より安定的な収入が得られるので、頑張るしかないんです」
仕事は月曜日から土曜日の朝7時から午後4時まで(昼休み1時間)。毎日朝4時に起床している。工場への通勤には月65,000リエルがかかるが、仕事と家庭の両立のための必要経費だ。
「体力的にはきついですね。仕事が順調な時はいいのですが、製造が注文期限に間に合わない時など、精神的にもプレッシャーがあります。でも、今は月に約250ドルという安定収入を得ることができているし、夫も違う工場で働いているので、夫婦で頑張ってなんとかやっています」
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